「なぁ、仁王、お前誕生日に何欲しいの」
「そうじゃのぉ……名ちゃんからのちゅー欲しいの」
仁王、ついに頭イかれたのか?
いつも何考えてるかわからない奴だけど、ネジとドライバーとか意図のわからねぇ物を欲しがったりするけど、名ちゃんのちゅーだぁ?
名ちゃんって、あれだろ?柳生の妹のことだろ、多分。
仁王の知り合いを網羅してるわけじゃないけど、俺の中で心当たりのある名ちゃんは柳生の妹だけだ。
柳生の妹の名は一年生だ。
あんまり柳生の素顔を見た事ないから似てるとかあんまり思わないけど、妙に落ち着いた雰囲気とか琥珀色の髪は似てるかも。
鋭い目尻と真一文字に結ばれた唇から近づき難いオーラを醸している。
それで水泳部。濡れた髪で学校を出ようとして柳生にしょっちゅう怒られてた気がする。
「な、頼むよ」
冬に水泳部がろくに部活できるはずもない。多分、暇してる。
そう踏んで、俺だって部活を引退してそれなりに暇があるから、ホームルームが終わってすぐに名を呼び止めて手を合わせて頭を下げた。
三年生の対して顔見知りでもない俺の登場にも関わらず、相変わらずの無表情で、口元に握りこぶしを当てて何か考えてる。
お?これはOK貰えるか?
これで名に承諾貰おうが断れようが、仁王には本気にしたのかと馬鹿にされるだけだ。
それだったら連れて行って茶化したほうが絶対にいい。
『わかりました。それだけでいいんですね?』
「多分な。やっぱ無理ってなったらそれはそれ。お前の気持ち次第だろぃ」
ついて来いと手招きすれば、俺の後ろに妙にいい姿勢で付いてくる。
仁王の奴、いつもみたいに屋上にいんだろ。寒がりのくせに。なんで12月の屋上にいるんだろな。
「連れてきたぜ〜」
突風に乗せるようにシャボン玉を吹いている仁王が当たり前のように屋上にいた。
俺を見たときにちょっと目を見開いたの見逃さなかったぜ〜?
「何じゃ」
「俺からの誕生日プレゼント。ありがたく受け取ってくれよぃ」
俺が名の背中を押して仁王の前に立たせる。
仁王のマジかって顔。超ウケる。
『どこでもいいですよね?』
「お、おう」
動揺する仁王に迷いなくほっぺちゅーをかました柳生の妹。意外と大胆なのか?
「んじゃ、俺はそういう事で」
俺は二人を残して屋上を後にした。
柳生の耳にこの事が入れば、怒られるんだろうなぁ。結構シスコンだったし。
それにしたって、変な要望だったなぁ。
仁王のやつ、あんまり女子に興味があるように見えないんだけど。告白されても断ってるし。
まさか仁王が柳生の妹を好きだったりしないよな?柳生を茶化すための仕込みだろ、多分。
このままアイツら付き合ったりしてな。