来たる3月5日は幸村精市の誕生日。立場的に何もしないわけにもいかない。

彼女だから絶対に祝わなければいけないわけでもないけど、家族や友人の次に祝われなければひどく傷付く。

その気持ちはまだわからないけど、優しい奴だから痛々しく気にしないフリをするだろう。
そういうの、よくないと思うし、わたしの心とグッと苦しくなるのだ。

それに、昨年は幸村とあまり話す仲ではなかったとはいえ、難病で入院していたことを思うと放っておけないのだ。


『何がいいだろうね。幸村へのプレゼント』
「わたしに聞かないでよ」


休日に会長を連れ出し、繁華街を散策している。

正直、男の子が喜ぶようなものは何かわからない。
会長もそれなりに悩んだらしいけど、結局、切原が何かお願いをしたらしく、それで解決したらしい。

手っ取り早く柳に相談するのが早いのだろうけど、卒業式まで彼と会うことはないし、約束を取り付けてまで相談することでもない。

一人では絶対に決められない自信があった。
わたしと幸村に共通する唯一の女友達である会長は嫌がりもせず付き合ってくれた。


幸村は何が欲しいのだろう。

わたしが知る彼はストイックだ。勝利に対して真っ直ぐで、それのために様々な物事を切り捨ててきたのだろう。
趣味はガーデニング。ブラームスのCDや、ルノワールの画集。そのあたりはあまりにも無難すぎるような気がして手に取る気になれない。

それに、幸村は同世代の男子が好きなものを喜ぶのだろうか。
どうも落ち着きすぎているし、わたしよりずっと重いものを背負っている気がして、彼女であろうとも踏み込めない何かを感じる。


欲しいものがないのか、自分で手に入れたいために欲しいものを表に出さないのか。
どちらにせよ、わたしの頭を悩ませる。


「ね、名。アレは?」


会長が指をさした先にはランジェリーショップしか見えない。


「いつぞやのプレゼントはわたし作戦でいこう」


腕を掴まれ、引っ張られるままにランジェリーショップの店頭に立つ。
わたしたちのお財布に優しく且つ、女の子らしいかわいいデザインの豊富なお店。

わたしだって15歳。こういうものが気になる年頃。体育の着替えだってそれなりに気にしている。

そこで目を引いたのは白に水色の小花のデザイン。かわいいけど、ちょっと落ち着いてて中学生には少し大人に見える。

幸村、水色が好きだったよね。お花……。
ぼんやりとサイズを探してしまい、我に返ってハンガーを戻した。


「やめちゃうの?」


隣でニマニマと笑う会長がいて、照れ隠しに肩にパンチを入れた。


今日は幸村へのプレゼントを買いに来たんだから、自分のものは後回し。