幸村に寝る前に《今日は家に来てほしいな》と、メッセージをもらっていた。
お互いにほんの少しだけ夜更かししたとはいえ、いつもと変わらない時間に目覚めてしまう。習慣とは恐ろしいものだ。
学校はないのに何故か怠けられない。不思議だ。
お昼過ぎにお邪魔します。とメッセージを送れば、もっと早く来ていいよと、返ってきた。
もっと早くと言われても。
返信を考えているうちに幸村からまた新しいメッセージが送られてきた。
親も妹も家を空けていて、お昼ご飯がないというニュアンスの含んだものだった。
しょうがない、サンドウィッチでも作って持って行くかと、腕まくりをしてふとメッセージを思い返した。
幸村の家に幸村しか居ないの?
聞き返せば二人きりを期待しているみたいなので、平静を装って同様で震える指で、サンドウィッチを持ってお昼前に向かうとだけ返した。
簡単なもので、小一時間でできたサンドウィッチ。玉子や野菜を挟んだもの。ホットサンドやフルーツサンドも用意した。
我ながらよくできたと思うけど、作りすぎたかもしれない。量より種類を。
それを持って幸村の家に来たものの、敷地の大きさに驚いてインターフォンを押せずにいる。
そもそも幸村の自宅周辺は閑静な住宅街で大きな一軒家が建ち並んでいるが、その中でも一際大きく、わたしの家がすっぽり二軒、庭だけでも充分暮らせそうだ。
「あ、名!来てたんだ」
『ゆ……精市』
庭に出ていたのか幸村はわたしを見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。どの道インターフォンを鳴らしても気付いてくれなかったかも。
門の鍵を開けようとした手を止めて幸村は動こうとしない。
声をかければ、わたしの顔をみて頬を緩ませた。
「今ちょっと不意打ちで……うん、夜に約束したんだよね」
わたしの手を引いて、玄関には入らずそのまま庭へ誘う。そこには折りたたみの木製のテーブルとイス二脚が並んでいた。
テーブルの上にはガラスポットに入ったオレンジジュースだけが置かれていて、メインのサンドウィッチの登場を今か今かと待っていた。
春の暖かい日差しと、色とりどりの花が咲いたここは、お昼ご飯を食べるだけには勿体ない空間だった。
「たくさん作っていきたね」
ランチボックスを開けた幸村はどれから食べようか悩んでいる。
「いただきます」
『いただきます』
タマゴサンドを選んだ幸村は嬉しそうに頬張る。
失敗、するほどの料理じゃないけど、美味しそうに食べてくれる人が目の前にいるとこんなにも嬉しいものなんだ。
「美味しかった!最高の日だね」
幸村7割わたし3割という感じで完食したサンドウィッチ。幸村が用意してくれたジュースはジューサーで絞ったものらしく、さっぱりとして美味しかった。
椅子を隣に並べ、寄り添って満腹と暖かい日差しで二人で微睡む。
どちらともなく手を繋いで、そのまま目を伏せた。