「クシュッ!」
『わっ!』


幸村のくしゃみで目が覚めた。もう陽は傾いていて、庭ではなくベッドの上に寝転がっていた。
隣に幸村も寝転んでいて、目が合うとにこりと笑っていた。


『ごめん、寝ちゃってた』
「夜更かししてたからね」


わたしの頬を撫でる幸村は、わたしが眠ってしまっていたことを気にしないらしい。
くしゃみに驚いて目が覚めたかと思ったけど、幸村の温かい手で優しく撫でられると、また心地の良い微睡みがわたしを包んだ。


頬を撫でる手がするする首を伝って、わたしの胸の真ん中で落ち着いた。


「ねえ。あの下着つけてないの?」
『あの?……え』


あの下着と言われても心当たりがない。幸村に一着も見せたことないし、貰った記憶もない。ましてや、買ってる姿も……。
いや待てよ。この間プレゼントを買いに行ったとき、会長と。

顔が少しずつ熱くなっていく。


『み、み……!』
「見かけただけだから!ちょっと期待したけど」


見てたの。上手く言葉にできない。

結局、幸村のプレゼントを買った後、会長についてきてもらってあの下着を買ったんだ。それを見られていたなんて。

同じく顔を赤くした幸村の顔が見られなくて、わたしはするすると布団に潜り込み赤くなった顔を隠す。
けど、当たり前だけど四方八方から幸村の匂いがして逆効果だった。


「俺たち付き合って1年近いからそろそろって思ったんだけど、まだ遠いみたいだね」
『……もうちょっと待って』
「待つよ。傷付けたくないから」


わたしを抱き寄せて、より濃くなった幸村の匂いに頭がくらくらする。
羞恥からかすっかり目が覚めてしまったし、ちゃっかりあの下着を身につけているために自己嫌悪で思考がストップしてしまった。

まだまだ、どこか勇気がないの。
幸村は強要することないと思うけど、ほんの少しだけ、いつもみたいにぐいぐい来たらいいのに。
でも、流されるように初めてはちょっと嫌かな。焦ったようにしたくはないし。

どこか察した幸村の手が背中を撫でた。


「ああ、そうだ。名は毒林檎は食べてないんだね」
『え?』


毒林檎?脈絡のない言葉に幸村の胸から顔を上げた。


「キスしたんだけど全く起きなかったからさ」
『え?』


いつのまに。
でも、幸せな夢を見ていたような気がする。


「名が毒林檎を食べてないか、俺が君の王子様じゃないかのどっちかだと思うんだけど」
『毒林檎は食べてないし……精市は』


わたしの王子様じゃないんですか。
蚊の鳴くような声が幸村に届いたかどうかわからない。

再び幸村の胸に顔を埋めて、彼の背中に腕を回した。


「プレゼント。もう見ちゃったんだけどさ、赤いバラの花言葉は愛してる。一本のメッセージは……」