県大会の決勝だろうと気を抜けないものだけど、あの応援団の暑苦しさだけは勘弁してほしい。

なんで学ラン着た野郎に応援されなくちゃいけないんだ。悪い気はしないけど。
どうせならチアリーダーの女子たちがいい。

いるのは知ってる。
サッカー部と野球部の奴が嬉しそうに話していたから。
中でも女子をまとめている先輩が可愛いんだとか。


「おい、赤也。なんで応援団の女子が来ないのかって気になってんだろ?」


睨むように見ていたら、汗ひとつ垂らさずD2の試合を終えた丸井先輩が話しかけてきた。


「なんでわかったんスか」
「嫌そうに見てるからだな。いつも一人いるけどな」
「マジっすか」


ほら、と丸井先輩は指を差す。

一人だけ周りと頭一つ違う奴がいる。一年かと思ってたら違うらしい。
髪を後ろに束ねて、男子に負けないように大きく手を振り、高く声を張り上げている。


S2の俺が出る幕もなく、関東大会への切符を手に入れ、片付ける応援団へ丸井先輩に手を掴まれ連行される。


「姓」
『押忍。丸井くんお疲れ様です!』
「いつもありがとな。赤也が女子はいねぇのか〜って言うから連れてきた」


暑苦しそうな学ランを襟まで詰めて、額に汗を浮かべて笑う姓と呼ばれていた先輩。
どんな漢気溢れた人かと思えば、全くの逆で、可愛くてチアリーダーのユニフォームのほうが何倍も似合いそう。


『学ランよりチアのユニフォームのがいいかな?』


先輩は手を後ろに組んで俺の顔を覗き込む。
応援の熱と日に焼けて赤く火照った頬の先輩にドキリとする。


「えっ!?」
「顔に出てるぜぃ?」
『ごめんね〜。真田くんが嫌がるからできないの』


なんとなく理由は察していた。
ミニスカートから晒した足やらヘソやら脇やらで、真田副部長がけしからんと言うのは目に見えている。

だからって、応援に黒服の集団だけを寄越さなくても。


『赤也くんが落ち込んでる時は、チアのユニフォームで応援に馳せ参じるから!』
「よかったな〜赤也」


丸井先輩に頭をガシガシ撫でられる。


「姓が個人的に応援することなんてないぞ」


先輩のウインクに見とれていたら、コソッと耳打ちされ、驚いて声を上げる。


『次のテニス部の応援は、関東大会かな?』
「だな」
『がんばれがんばれ』


無邪気に俺の頭を撫でて、撤収する他の応援団を追いかけて姓先輩は去ってしまった。

先輩のその行為に思わず固まってしまう。
丸井先輩に脇をくすぐられるまで、硬直した身が元に戻らなかった。


「姓に惚れただろぃ?」
「えっ、えぇ!?」
「勝利の女神は敵が多いぞ〜」


カッと赤くなる身体に、けらけらと笑う丸井先輩。
真田副部長に怒られる前に戻らなくては。
熱を冷ますために、誤魔化すために、先輩を置いて全力で荷物置き場まで走った。