『幸村くん、聞きたいことがあるんだけど、いい?』
「どうぞ」
『不二くんの誕生日に何をあげたらいいかな』
「その辺の石でも喜ぶでしょ」
『柳くん、聞きギャッ!』


昨晩、越前くんから送られてきたメールに、不二くんの誕生日が近いから祝ってあげてといった内容が生意気に書いてあった。

祝ってあげてと言われても言葉だけでいいものか。
不二くんとの接触はあまりないから、辛いものが好きとサボテンが好きくらいしか情報がない……。

だから合宿で同じ部屋だった幸村くんに聞いたんだけど、予想通りの答えが返ってきた。


どうも幸村くんと不二くんは仲が悪い。

合宿ではそんなことはなかったらしいし、わたしが初めて会った時も険悪さはなかった。
寧ろ、ただでさえ顔のいい幸村くんに顔のいいお友達が並んでいて、脇見運転して玉突き事故を起こしそうな画力があった。

なのに、いつのまにかピリピリというか、ビリビリというか、笑顔のまま睨み合いと嫌味が飛び交うのだ。


今だって幸村くんに口を塞がれて動けない。


「他校なんだから祝わなくたっていいだろ」
『でも……』
「でもじゃない。だったら、俺の誕生日プレゼントを考えてよ。バレンタインのことも大丈夫?」
『アッ!バレンタイン、忘れてた〜』


どうしよう。不二くんの誕生日より先に来るし、誰にあげたらいいかわからないよ。
ついでになっちゃうけど、バレンタインの時に不二くんの誕生日プレゼントもあげちゃおうかな。
それだと二週間も早くなっちゃうよ。


「チョコレートも不二に渡すなよ」
『え、どうして』
「本命だと勘違いされたら困るだろ」
『た、確かに。でもそれくらいわかるんじゃ……』


立海で一番チョコを貰ってる幸村くんだからわかりそうなものだけど……。ハッ、でも幸村くんの受け取るチョコは全部本命そうだ。
不二くんもモテそうだから、もらうチョコ全て本命で義理と区別がつかないのかもしれない。

ブン太の方が本命と義理の区別がついてそうだな。義理がどんな感じか聞いてみなきゃ。


「というより、どうして不二の誕生日を知ってるんだい?」
『越前くんに教えてもらった』
「そうか、ボウヤか。わかった」


幸村くんが試合前みたいにピリピリしてて怖いよ〜。


「でも実際のところ、不二は名から貰った物なら何でも嬉しいと思うよ」
『プレゼントだからそうだよね〜」


そうだよね。プレゼントは何貰っても嬉しい物だよね。
やっぱり無難なところでタオルかな。沢山持ってても困らないよね?
何色が好きなんだろう。青学だし、青のタオルとかでいいかな。黒ってイメージもないし。

バレンタインはチョコチップクッキーでいいかなぁ。


「何作ろうとしてるんだい?」
『クッキー』
「まぁ、許容範囲かな……」
『何が?』
「何でもないよ。俺にも頂戴」


幸村くんクッキー好きなのかな。みんなにも配れるし張り切って作るぞ。


「いいのか、精市」
「ん?フェアじゃないだろ。あまりやり過ぎて名に嫌われる方が深刻じゃないかい」
「そうかもな。不二は焦るお前をみて遊んでる可能性もあるがな」
「だとしたら、いい性格してるね」


不二に合宿で少しだけ名の話をしたら興味を持ち始めたのは意外だった。
彼女と顔を合わせたら積極的に話しかけて仲良くなってるし、次第に俺を煽るようになってきた。
コレを見たボウヤも楽しんでるみたいだし、青学いい性格してるよね。本当。

俺と名は二人で出掛ける仲だし、彼女と一番近い男は俺だと思うし、多少なりに特別な感情があると思ってる。

いや、調子に乗りすぎてはいけない。
不二の挑発に乗ってはいけないし、名が俺に気があると勘違いしてもいけない。
慎重さが大事だ。


『えーん!やっぱり、不二くんへのプレゼント選んで』
「はいはい」


どうせならセンスいいものを贈ってやろう。俺のセンスならあいつも気分が悪いはずだ。

見てろよ不二。名は渡さないからな。