あれ、桜乃ちゃんどこに行ったんだろう。
今日はあの子のボレーの練習に付き合う予定だったんだけど、まだ校内で迷ってるのかしら。

多分また中庭で時間を忘れて素振りの練習してるんだと思うんだけど。
その時いつもそばにいてアドバイスしてる子がいることも知ってるんだけどさ。


『桜乃ちゃん、彼氏くん今日もサボり?』


深く帽子を被った男子テニス部レギュラーが不機嫌そうにわたしを睨みつけた。
隣にいる目的の女の子は、紅潮した顔を一気に青くなった。


「……何」
「はわわ、姓先輩……!あっ練習……!忘れてたわけじゃないんです、ごめんなさい!」
『いいのいいの。彼氏くんに教わったほうが効果ありそうだしね』


帽子のツバからジロリと睨みをきかせてる彼はつまらなさそうだ。
睨んできたってあんまり怖くないんだけどさ。彼、桜乃ちゃんと身長変わらないし。


水を差した後だけど、この後も二人で仲良くトレーニングしてほしいから邪魔者は去りますかね。


桜乃ちゃんに片付けまでには戻っておいでと一言伝えて女テニのコートに戻ろうか。


「あんた、スカートちょっと短いんじゃない?」
「リョーマくん、先輩だよ……!」
「デスカ?」


脇にラケットを挟んで両手をポケットに突っ込んで気怠そうに立つ姿が、噂通りの生意気というか、世間知らずというか、ふてぶてしいというか。

隣にいる桜乃ちゃん見てよ。
止めたいのに彼氏くんが突っ走るからどうしたらいいか困ってるじゃない。


「彼氏先輩があんたのスカートがいつもより短いって呟いてましたよ」
『誰それ』
「よく一緒にいるくせに」


仕返しと言わんばかりにそれだけを言ってコートへ去っていった。


「すみません!リョーマくんってばなんというか……日本の上下関係に慣れてなくって」
『気にしないで!わたしこそいじってごめんね』


ここで桜乃ちゃんが謝ってしまうと本当に恋人みたいに余計に思うけど……。


でもまぁ、越前くんは意外とまんざらでもないみたいだし、ほどほどにこれからもいじろうかしら。

桜乃ちゃんも彼に教わってる方がわからないところを聞きやすいみたいだし、滅多に褒めるような子じゃないから褒めてもらえた時はひとしおだろうし。


しかし、彼氏先輩……?いつも一緒にいる……?誰のことだろう。
越前くんがいるところで一緒にいる姿を見かける先輩だからテニス部の人なんだろうけど。
二年はよく知らないから三年のことだろうし、6人しかいないし……。


うーん……。


『手塚……?』


部活の連絡のやりとりをよくやってるし、一緒にいるところをよく見られてるかもなぁ。
でも、スカートが短いとか言うかな……。


『てづか〜。このスカート短い?』
「せ、先輩!裾をめくっちゃダメですよ……!


生徒会終わりのまだ制服の手塚が運良く通りかかったので、スカートのプリーツをつまんで聞くことにした。

桜乃ちゃんだって短いスカートを履いてるのに、今更照れなくたっていいのにね。


細かいものを見るように眉間にしわを寄せて、手塚はジッとわたしの顔を睨んだ。
そして、スカートの裾を持つ手を払った。


「短いな。菊丸のようにスパッツを履くようにしろ」
『だけど可愛いでしょ?』


もう一度裾を摘むとまた払われた。


無表情の手塚の顔が怒ってるように見えるのか、桜乃ちゃんは半歩下がって萎縮している。


『えっち』


すると手塚の眉毛がくっつきそうなくらい眉間に深いシワが入った。
邪な気持ちで見てないことくらいわかってるよ。すぐ顔に出るんだから。


『君の後輩くんが手塚のことわたしの彼氏って言ってたよ。注意しておいてね』
「……俺がまず注意するのは姓に対してだな」
『えー、やだ〜。桜乃ちゃん戻ろ』
「っ、はい!でも、お話は」
『部活中だからいいの〜』


桜乃ちゃんの肩を押しコートへ戻ったが、手塚にずっと後ろ姿を見られていた気がする。


スカートが短いものを履いてるのが手塚への挑発なんだけど、中々乗ってくれないなぁ。


「手塚さ、ちゃんと姓に言ったら?油断しすぎで気になってるんだろ?」
「……」
「今日のは初めて見るね。可愛いね」
「不二」
「はいはい。さっさと彼氏ヅラすればいいのに」