今何時だ。虫の声すら聞こえないくらい深夜か。
障子から煌々と月明かりが影を落としている。今日は満月だったか。


しかし夜中に目が醒めるなんて珍しいこともあるものだ。
少し左腕が痺れる感覚がある。これのせいか。


驚いて声が出そうになったところをぐっと飲み込んだ。
何故脇の下に隣の布団で寝ていた名が潜り込んでいるんだ。


いや、こいつが向こうの布団に潜ったところを俺は見ていない。

俺が寝たのを見計らって潜り込んできたのか、寝相が悪く入ってきたのか。どちらもあり得る。


一つ屋根の下、同じ部屋で布団を隣に並べて寝る仲とはいえ、名とは契りを交わした仲ではない。
同じ布団で寝ていいはずがないのだ。


なのにこの俺を全く敵ではない、何もしてこないと安心して緩んだ寝顔はなんだ。
あまりの危機管理のなさ、警戒心のなさに目が冴えてしまった。


俺はきちんと名を理解し、俺自身を名に認めてもらうまで手を出さないつもりだ。

眠って無防備な男だから安全だとも思ってるのか。
俺が寝ているうちに、身体のそこここを触っていたとしたらどうするつもりなんだ。

誰かが布団に潜り込んできたなら眼を覚ますだろうに、お前だと寝ていながらも理解して俺も無防備なことに驚いた。
名はこの事に気付いているのだろうか。


第一。俺が寝返りを打って潰してしまったらどうするつもりなんだ。俺が乗れば岩に潰されたもの同然だろう。


飯でも食ってる夢を見ているのか口をもごもごと動かしている。随分幸せそうにして。


名を起こさないように左腕を動かし痺れから解放させた。
だからといって脇の下に名が寝ているため、左腕は行き先なく大きく脇を広げるしかできなかった。


しかし、俺はこの状態でいいのだろうか。

同じ布団に寝ていることは名にとって危険だ。
起こさぬよう抱きかかえて隣に移すことができるのだろうか。
客人の布団に俺が移るのもどうだろう。
追い出すように押し出すのも忍びない。


その時寝返りを打った名が赤子が母の手を探すように俺の寝巻きを握った。

さて、たちまち困った。動くことすらできなくなった。
本当に寝ているのかこいつは。


ええい!儘よ!


俺は寝返りを打ち名と向き合うように身体を横に向けた。
それでもなお名はぐっすりと眠っている。


油断した寝顔に触りたいと気持ちがむくむくと湧いてきた。
いかん。それは最低な男がすることだ。

見ない。見ないようにしよう。
目を閉じて深く息をした。


あれだけ目が冴えていたのに深く眠りにつけた。
久しぶりにこんなにゆっくり眠れた気がする。


目が覚めたときも相変わらず名は俺の布団で寝ていた。
飯の時間までゆっくりと寝てるがいい。

目覚めたときはなんで俺の布団にいるのか問われるか、どうして俺が布団にいないのか問われるのだろうな。
どちらにせよ、俺たちの関係のあり方を話合わねばならんな。


練習着に着替えて俺は外に出た。