「誰かと付き合うなら俺から告白したいんだよね」
幸村くんはわたしから借りた本の感想を言ってくれたのだろうか。
受け取った小説はやけにもどかしくて、遠回りで、その上すれ違いも多く中々一緒になることのない恋愛小説だった。
それが今度映画化するらしく少々話題になりつつある。
友達と会話の中で読んだことあるとあらすじを話していたら、近くにいた幸村くんが興味を持ち本を貸したという経緯がある。
幸村くんも日本のその上話題の恋愛小説読むんだ……。と、失礼ながらに思ってしまった。
確かに幸村くんぐらいの人なら、想いを告げれば応えてくれる人の方が多そうだ。
それにこんなイケメンで多趣味でテニスが強すぎる人に選ばれたプレミアム付き。
どんなアクセサリーよりも女子が欲しがりそうだな。と、物語の中の女子基準で考えてしまう。
でも、この夢見る少女のような幸村くんに一言返すならば、
『一生恋人ができなさそう……』
これに限る。
「本当にそう思う?」
わたしは一つ首を縦に振った。
幸村くん本人は自分の恋人を作る気でいるらしい。
それもそうか。告白したいって言ったんだから。
『幸村くんの恋人条件のハードル高そう』
「え、そんなことないと思うけど」
『そうかなぁ。美人で頭が良くて品がある人じゃなきゃダメそう』
「俺の価値観そんな風にみえてるの?」
『見えてるというか……』
幸村くんはわたしと付き合わないでしょ?と、言おうとしてあまりの虚しさに言葉が詰まった。
妄想?空想でしかないんだけど、幸村くんと同じレベルの価値観と意識がないとメンタルが負けて死にたくなる。
わたしは少なくとも憧れていても無理だ。周りが気になって仕方がない。
わたしが続きの言葉を紡がないから幸村くんは首を傾げた。
なんでもないと首を振れば、幸村くんは肩の力を抜いた。
「姓と付き合うからいいんだよ」
『補欠……』
「何言ってるんだ第一候補だよ。そんなにびっくりして細くなった猫の真似をしなくてもいいだろ」
そんなつもりはなかったけど、びっくりして肩が縮こまったので幸村くんにはそう見えたのだろう。
幸村くんはわたしと付き合うつもりなのか。えぇー、まじか。
ガツンとサッカーで予期せぬ方向からきたボールが頭に当たった感覚が頭に走る。
「姓から借りる小説ってときめく告白じゃないからさらっと言ってみたんだけど響いてないね」
『いや、そんな』
「好きだよ」
次は金属バッドで殴られた。
『わたしと付き合ってどうするの』
「どうもこうも、君の読む小説はこの先がないじゃないか」
言われてみればそうかも。じゃなくて、急になんてことを言いだすんだ。
幸村くんはわたしの顔を見つめていて、理解が追いつかないことに気付いたらしい。
「触れ回ろうか?」
『いや大丈夫。伝わりました』
それは良かった。と言った幸村くんは予鈴と共に去ってしまった。
わたしの一存に委ねてこれからの授業に出られるというのか。わたしはとても無理そうです。
一度、お付き合いを物語にした小説でも読もうかしら。幸村くんとお付き合いした妄想が捗ってしまう。
どうしたらいいの……。