「苗字」
『何、柳』


二人残された生徒会室。
今日の生徒会長は妙に苛立っていて、副会長のわたしに仕事を丸投げして帰っていった。

不機嫌の理由は柳曰く振られたそう。
八つ当たりでわたしの仕事が増やされては堪ったもんじゃない。


各部活に配る資料をホチキスで留めていく。
こんな単純作業もできんのか、生徒会長は。
生徒会長だからしないのか?ふざけんなよ。


力一杯ホチキスを鳴らしていると、柳に話しかけられた。

あまりの煩さに注意しようとしてるのだろうか。だったらゴメン。
八つ当たりをホチキスに八つ当たりしているんだ。


「誕生日プレゼントにもらうならば何がいい」


針が切れたのか空振りしたホチキス。


『何のためのデータ?』


引き出しからホチキスの替芯を取り出す。


「間も無く誕生日だろう。参考までにだ」


柳もホチキスを引き出しから取り出し、椅子ごとわたしの机にやってきた。


プレゼントなぁ。

わたしはあまり他人の誕生日が覚えられない。
だから、プレゼントを貰っても返すタイミングを逃してしまうので、仲の良い友達には不要と伝えている。

それに、春生まれ故に、新学期から仲良くなった人とそういう会話を交える頃には誕生日を終えたところなのだ。
幸か不幸か、お土産と誕生日プレゼントがひとまとめにされることも。


『それって、どういう人から貰える奴?』


ふむ、と柳は顎に手を添え考える。


「友人からならば」
『何でもいいかな。手作りのお菓子とか、雑貨とか』
「クラスメイトならば」
『お菓子とかでいいかな。手作りは嫌だけど』
「あまり親しくない異性ならば」
『そうだなぁ』


それってわたしと面識はないけれど、好意を抱いている男子ってことだよね。
うーん、そういう奴から貰うのが一番迷惑。


「ぬいぐるみは」
『形に残るものは絶対に嫌。何仕込んでるかわかんないし』
「良い心掛けだ。花束は」
『受け取るかな』
「なぜ」


なぜってそりゃ、枯れれば後腐れなく棄てられるから。
「あの時あげたアレまだ部屋にある?」なんてぬいぐるみやアクセサリーを貰って、そう言われたら堪ったもんじゃない。

酷い女でもなんとでも言えよ。


「ありがとう、参考になった」
『物で気を引こうなんて考えは捨ててほしいけどね』
「わからなくもない」


柳もテニス部で色々女子から渡されている。

だから気にも留めない相手からプレゼントを貰うという行為がどんなものか知っているはず。
なのに《知らない異性からのプレゼントは何がいいか》は変な質問だ。


「最後に、お前は誕生日を祝われることが嬉しいか」


わたしはホチキス留めが終わった書類を数える。


『何ていうか、生まれてよかったなんて思ってないから祝われる価値はないかな』


予備も含めて充分な量だ。
これで連休中の部活動に関してのお知らせが配れる。

時計を見れば17時を回ったところ。
遅くなったな。帰らなきゃ。


「生まれた価値など、15年の中で見出せるものではないぞ」


わたしは無言で机の上の筆記具を片付けて生徒会室を出た。