ゴールデンウイークが明け、大会の結果や旅行の話で盛り上がる学内。

わたしというやつは、どこにも出かけず、借りた映画や溜まったドラマを消化していた。
恐ろしいほどにダラダラと過ごして、今日の登校が若干めんどくさい。


教室に入ると、友達が駆け寄ってきた。


「誕生日おめでとう〜」
「はいこれ、クッキー焼いたの!」
『ありがとう。はい、お返しね』


友達の誕生日が覚えられないからその場でお返しするのがいつものパターン。
今年はマカロンです。唯一これを買いに外に出かけました。

誕生日という言葉を聞きつけ、クラスメイトがお土産に即席でメッセージを書いて渡してくれた。
そういう時のために、小包装のお菓子を持っていたりする。


『ん?』


わたしの席にクラフト紙の紙袋が置かれている。
友達に指だけ指して聞けば、首を横に振られる。

怪しいと思いつつ、その袋の中身を確かめる。


『花束?』


リボンの巻いたガラスの小瓶に活けられた大ぶりの紫や白の百合やスイレンのような形の花。
あまり花に詳しくないから何かわからない。


メッセージカードに《誕生日おめでとう、苗字》とだけ、書かれ肝心の誰からの物なのかさっぱりわからない。
随分綺麗な字だ。

友達はそれに対してロマンチックとうっとりしているけど、贈り主不明は正直気持ち悪い。

まぁ、枯れるし、祝ってくれる気持ちだけありがたく頂いておく。


さて、この花は何なのだろうか。
漢字以上に花は調べることが難しい。


誕生日に花束なんて中学生の発想とは思えないし、情報の漏洩先に殴り込むほうが早い。


放課後のテニスコートへ向かう。


『柳』
「来ると思っていた。その紙袋の中身のことだろう」


わたしは紙袋からそっと花束を取り出す。
ジッとその花を見つめた後、首を横に振った。


「すまない、花の種類については管轄外だ」
『そんな気がしてた。あの事、誰に話したの?』


柳は口角を上げた。秘密ということだ。


誕生日も知られている上に、どんなものなら受け取るかなんて、柳に教えるんじゃなかった。


「俺が贈ったという考えには至らなかったんだな」
『質問された時点で、柳は誰かに頼まれて欲しいものを聞いてきたと思ってね』


それに柳がわたしに贈るならば、わたしに欲しいものを直接聞くか、友達伝いに情報を集めるはずだ。

メッセージカードに書かれた文字は明らかに柳のものではなかった。
柳のように文字の本質を知ったような字ではなく、ワープロで打ち出されたような字。


「花を知りたいならば、精市のほうが詳しいが」
『いや、いいよ。部活中に邪魔したね」


花束を袋に戻し、正門に身体を向けた。

花束と贈り主はもう気にしないようにしよう。