「丸井、赤也、恋愛って何だろう」
「ぶ、部長?」
「ゆ、ゆ、幸村くんの口から恋愛の文字が出てくると思ってなかったぜぃ」
姓の言う恋愛に関して誰かに相談したかった。
放課後に甘いものでも食べに行こうと丸井を誘えば簡単に乗ってくれた。
途中で赤也も捕まえて、丸井のオススメのカフェに来ている。
俺が恋愛と無縁と思っていたのか、動揺して胸を押さえていた。
相談事なら何でも蓮二なんだけど、恋愛に関しては多分丸井や赤也のほうが知っている気がした。
漫画とかで、年相応の恋愛を知識がありそうだったから。
「別に気にしなくていいんじゃね?」
「ぜーんぶひっくるめて好きじゃないッスかね?」
俺が姓に対しての気持ちを黙って二人は聞いていた。
パフェを食い終わったというのに、甘いココアをすすっている丸井。
その口から軽い返事が返ってきた。
拍子抜けというか、俺が重く捉えすぎていたみたいだ。
「俺もよ、恋愛に関してはよくわかんねぇ。学校で習わねぇし」
「名先輩はアホなんで素直な気持ちを受け止めてくれるッス!」
「好きは好き!解決」
二人はイタズラっ子のように笑い、俺の背中を押してくれた。
そうか、素直な気持ちもわからなくなっていたのか。
「にしても、幸村くんが姓をねぇ?ほぼ一目惚れじゃん?」
「ずっと好きとかじゃなくて、つい最近の話だったんスね」
そう、姓に話しかけたのはあの放課後が初めて。
いや、何度か話してるか?全く覚えていない。
話しかけた時の反応が面白かったから、イタズラしようとなんとなく思っただけ。
我ながらサディストだなと思う。
うんうんと悩んだあとに、恥ずかしそうに一問一回のキスを選択した姓に何か内側から込み上げてくるものを感じた。
この子、欲しいな。本能的なものかな。
その時は気のせいってことにして押し殺した。
でも、目を瞑って俺からのキスを覚悟して待っている顔に、虫の息だった欲が俺を包み込んだ。
やっぱり、欲しい。俺だけのものにしたい。
貪るように夢中で姓に口付けた。
悪い子。俺も、惑わせた君も。
これが《好き》なら醜いと嘲笑う。
「つーか、名先輩が嫌がらないから脈ナシってわけじゃないッス」
「姓はアホでも、フェンスにかじりついてる女とは違うかな」
「そうだと嬉しいな」
唯一の懸念の姓が軽い女だったらどうしようってこと。
俺よりも昔から付き合いのあった赤也や、丸井の話を聞いていれば、そうではないとわかった。
胸の内を口にするのは良いことみたいだ。
姓のことが多分好きから、確信に変わった。
こういう時、善は急げとか、思い立ったが吉日なのかな。
明日、姓に会ったら伝えよう。
「何から奪ってあげようかな」
「幸村くん、バイオレンスすぎ」
「とりあえず、ファーストキス奪ってるんだし、ゆっくりしましょうよ」
二人にタンマをかけられ、恋愛ってそういうものじゃないんだなと理解する。
うーん、難しいね。
「姓が途端に可哀想になってきた」
「五感奪われても笑ってそうだから、大丈夫ッスよ。多分」