01
いつも通りだった。

何もかもが、とまではいかないがいつもと同じ時間に起き、担任から掛かってくる電話を無視して時間になればバイト先であるコンビニへ向かうだけ。

何の変哲もない日常だった。


──あの時までは。



……なんて大層な事を考えながら、目の前で慌てる男性を見る。口元には笑みを携えたまま。
白髪しらがと呼ぶには烏滸がましい程の綺麗な輝く白髪に、まるでどこかのお話の中から出てきたのではないかと言うほど綺麗な金色の瞳。男性にしては線が全体的に細く、病弱の様にも見えるその男性は。

見た目の儚げな印象とは裏腹に低く馴染みやすい声でうお!と大声で発した。必死に財布やポケットを漁り、コイントレーに置かれた金額と画面に表示された金額を照らし合わせても十円足りない。

これでもかと言うほど積み上げられたお菓子をどれか一つ、それこそ安い割に美味しく、手頃に食べられる十円菓子を減らせば足りるというのにそんな考えはないのか必死に足りない十円を探す、目の前の第一印象儚げ男子。

全体的に細いからこそ強調される長く伸びた手足に整った顔。シンプルに纏められた服装や本人から滲み出るオーラにはたくさんの女性が寄ってくるのだと何も知らないわたしでさえ思う。

そんな男性が突然見た目に合わない声で叫んだら誰だって吃驚する。もちろんわたしだってした。と言うより、声と外見が釣り合わな過ぎてわたしの中で時間が止まったようにさえ思える。


そんなこと目の前の人は考えてないんだろうけど。


何度も同じ場所を探すのを繰り返し数分。これじゃ埒が明かない。どう考えても十円持ってないだろ。おい。


まだ彼の他にお客がいなかったからいいものの。まだわたしには裏方の仕事が山ほど残っている。それこそこんな無駄な時間を使っていたら時間までには終わらないほど。


ああ、もう、十円ぐらいいいや。



すぐに飲み物を買えるようにと忍ばせていた十円玉をポケットから取り出し、お金を数える振りをして見つからないようにその十円玉をコイントレーの上に置いた。



「すみません、お金、足りてますよ」

「ん?確かに。さっきは確かに足りなかったはずなんだがなあ」


こりゃ驚いた、と呟く男性を無視して会計を進める。さよならわたしの十円。

たくさんのお菓子は一番大きな袋二つにも及んでしまった。これだけ買ってお菓子パーティーでもするのだろうか。流石に一人で食べ切れる量じゃない。

レシートと商品を手渡したわたしはマニュアル通りのお辞儀で男性を見送る。


「ありがとう。助かったぜ」


そう言って歯を見せながら笑った男性に見とれていたのは誰にも言わない。多分。嘘ですすぐにでも誰かに言いたい!
退店を知らせるチャイムが鳴ったあとも暫く幻像を見るかのように一点を見つめてしまった。
そしてすぐに来店を知らせるチャイムが鳴らないことと、窓越しに誰もいないことを確認してから深く息を吐いてその場にしゃがみこんだ。



「……何あの笑顔可愛い!」
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