つり目の生活
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▽2020/05/24(Sun)
海へ還る
今日でゆっくりとした休みが終わる。明日から私も動き出す

という事で、最後の休みに家の近くの喫茶店に行ってみた。所謂純喫茶というやつ、マスターがとても渋いながらもハンサムなおじ様で、おぉ……と感嘆の溜息をついてしまった

頼んだ珈琲は酸味がないものを頼んだのだけど、思いの外苦味が強すぎて、次は違うものを頼もうと思った。私の好みでは無かっただけで、味と質は申し分無く、寧ろ上品な味でした

シナモントーストも頼んで、さてゆっくり書き物でもしようかなと思っていた所、突然元同居人がめちゃくちゃ激病みしだして、もううざいうざいだるいだるい病み攻撃に晒され、ブチ切れた私は即行お店を出て一旦帰って話を聞くことに。

でも、電話には出ないし出たと思ったらべそべそに泣いてて話にならず、LINEのメッセージがひたすら病んでるだけという一番厄介なパターンで

せっかくの休日最後の喫茶店の時間が、貴重な時間が台無しにされた。

そこから私も精神が無理になってしまったので、家を飛び出して海を見に行った。
虎さんには、見苦しいものを見せてしまったなと後悔している……
申し訳ない。

そこから、連絡を取りつつ宥めつつ、ぼーっとしながらモノレールをグルグルと気付けば三周くらいしてて、空はあっという間に青い夜を迎えていて、そこから更に青黒くなって、夜景が映える黒へと変わっていった。

「夕暮れ時の景色」から「都会の夜景」へと移り変わる、その瞬間が堪らなく好きだ。
どうしてあんなにも、あのモノレールの走る街々は、無機質と海がよく似合うのだろうか

彼処一辺に広がるノスタルジーは、あまりにも心に突き刺さってしまって、ただ景色を眺めているだけなのに、何となく物思いに耽ってしまう、



海は、真っ黒い夜の海が一番好きだ。

だから、その黒い海を待っていた、というのもあって、もういいかな、と目的地に降りたのは20時近くだった

ふら、と降りて、駅から出れば、嗅ぎ慣れた潮風の匂いに包まれて、思わず「ただいま」と言いたくなる。
と言うか、私はこの海に会いに来る度、「ただいま」と言っている。

帰ってきたな、と思ってしまう

海は、人よりも遥かに広い、正しく無償の愛のような、人皆全てを包み込んでくれるような
そんな優しさを感じてしまう

特に今日みたいな日は。

丁度いいくらいの肌寒さと、ゆるい潮風に頬を撫でられて、髪を揺らされて、ただ波の音を聴いていればいい。

それだけで、不思議と自分の全てを肯定してくれているような、そんな優しさに包まれているような錯覚に陥ることができる。

遠くの埠頭の灯り、橙、白、青
様々な灯りの色達が、黒い波を美しく静かに彩る。
ただそれを、眺めるだけでいい。

それだけで、不思議と落ち着くのだ。
深呼吸を赦されていくような、不思議な感覚。
目を閉じればそこで眠ってしまえそうな、本当に優しい風と匂いに包まれて、優しい夜の海は、母そのもののようで、私は海に「還り」たくなる。

朝や昼、夕暮れ時では、また全く別の顔を見せるその場所へは、私は夜にしか行かないのだ。
黒い夜だけが、その静けさを与えてくれるから、



いつか、恋人を連れてこの海を見せたい。

あの人は何を感じて、何を思ってくれるのだろう。


優しいあの黒い海を、彼も安らぎを感じてくれればいいと思う

またあの海へ帰りたくなる事があったら、今度はどんな服を着て行こうか

なるべく風と揺蕩う事が出来る、そんな服を纏って行く。










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