つり目の生活
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▽2020/08/11(Tue)
決別と改めて
戸籍にバツがついた。

虎さんとは明確な記念日みたいなものはなくて、ただ、始まりは丁度一年前の8月の、会社全体のBBQが きっかけだった。

私の元夫は最初こそ束縛やら何やら、几帳面だったものの、後半は私の反発により、そんなにうるさく言わなくなった。
アルバイトとして入社して3日目くらいに、少し残業したくらいで電話がかかってきて、第一声が労いの言葉でも何でもなく、「浮気してんの?」から始まったことに対して、スタッフ一同ドン引きするくらいのブチ切れ具合を電話口に怒鳴りつけていたのを今でも覚えている。


8月8日。


入籍記念日だったはずの、二年目は、互いの同意の元、緑色の縁の用紙によって、穏やかに、にこやかに終わった。

余りにも和やか過ぎて、受付の人が婚姻届を出しに来たのかと間違えたくらいだ。

その後、最後に焼肉を食べて、酒を飲み、解散した。


まだ愛してる、本当は好きだけど、執着はしない。
そんな言葉を聞きながら、酒を飲んでいた。

大人になったね、と言われた時、ほんの少しだけ泣きそうになった。
私が新卒で入った社会人なりたての頃から見てくれた人でもあったから

育ててもらった恩はあるけれど、それでも私が選んだ道は貴方では無かったね、ごめんよ、と返した。


煙草を最後に一緒に吸って、「また」はないのに「またね」と別れた。
それがせめてもの救いになるのなら、


そして虎さんの待つ、我が家へと急いだ。
虎さんはいつも通り寝室で待っていて、特別なお出迎えとかは無かったけど、彼の言う「お帰り」に安心して、同時にあの人にはこうして帰りを待ってくれる人が居なくなってしまったことに、申し訳なさを感じた。

もう大分前から、それを言うはずの私は居なかったけど。


戸籍上も、完全に赤の他人になってしまった。

でも、それで良かったのだと思う、


私は自分の人生の大きな決断を、虎さんとの未来に委ねた。
彼は、私にとってはもう無くてはならないものになってしまって、彼の居ない人生など意味がなくなってしまった。

だからこそ、早くあの人にも良縁があって欲しいと願っている

半年ほどの別居と、虎さんとの同棲生活があって、ようやく、ようやく私は一人の女として彼の元へ行くことができた。

虎さんとは、去年の秋頃約束をしていた。

「来年までにこっちに来なかったらどこかに行ってしまうかも」と仄めかす虎さんに、私はきっちり来年までにケリを付けると約束していた。

そして、ちゃんと一年、今年が終わるまでにケリを名実共に付けたのだ。
彼はまだ若いからピンと来ていないかも知れないけれど、一つの夫婦が赤の他人に戻って、そしてその女が自分よりも歳下の男の元に行くというのは、とても勇気の要ることで、とてつもなく激しい愛だということを、いつか痛感してくれるようになったらいいなと思う。

とんでもない事をしたのだよ、君は。
いい意味でも、悪い意味でも。笑

私のしている事は、とても褒められたことではないけれど、それでもきちんとケジメを付けて、責任は取った。


そしてその夜、虎さんに正式に、本当に何も負い目のない、「彼女」として抱いてもらった。
愛してるよ、と意識が途切れそうになりながら何とか繋ぎ止めて、中に沢山、沢山出してもらった。

縋って、爪を立てて、強く抱きしめて握って、離さないで欲しいと願いながら、このまま死んでもいいと思った。

愛してる、という言葉を、心底伝えたい相手は虎さんだけだ。

私の首や肩、胸元に、赤い花が沢山咲いた。
彼の首元や胸にも、より赤い花を咲かせた。

私の選択は間違ってない。


虎さんと一緒なら、堕ちるところまで堕ちていい、


何があっても離れることは無いと、そう決めた。

ようやく虎さんの正式な恋人だと、胸を張って言える。

改めて宜しくね。
絶対に私のことを離さないで、飼い殺しにしてね。

墓場まで一緒だよ、と、引きずられながら思いたい。




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