二人はロレンツィがシュヴァルツに入団したばかりの頃に出会った。当時身体年齢(≒精神年齢)でロレンツィは17、8歳、ジェドは22、3歳。まだ平団員のジェドがたまたま新人のロレンツィの教育係にされたことがきっかけで関わり始める。

当時から不真面目なロレンツィにジェドはよく腹を立てており、また性格も合わないと感じていたが、一方でどこか死の気配を纏った生き方をしているロレンツィがなんとなく放っておけず業務上必要となる程度を超えてロレンツィのことを気にかけるようになる。

ロレンツィは最初は一切歩み寄ろうとしなかったが、ロレンツィにとってジェドは初めて出会った“自分のために”きちんと叱ってくれる大人であったため、次第に興味を持つようになる。しかしロレンツィは他人に心を開く方法を知らなかったため、ジェドに懐くことはできないままセフレのような情のない体の関係を迫る。

その頃ジェドは真面目に正しい道へ進むことに挫折し、しかし裏社会に身を置くにはまだ表社会への未練が残っていた頃で、ロレンツィと不埒な関係を持つようになったのは現実に逆らって真面目な態度を取り続けることへの諦念や疲れから。不真面目なロレンツィと不埒な関係を持つことを一種の逃避としており、自分からはほとんど悪いことをしてこなかったジェドにとっての火遊びのような感覚になっていた。

二人の関係はこのような始まり方で、最初は互いに深い情は湧いていなかった。また当時は仲自体は悪かったが主に口煩いジェドにロレンツィが反発する程度で対等な喧嘩をすることはなかった。しかし体の関係を持ち始めた辺りからロレンツィが不器用ながらも距離を縮めてくるようになり、それに伴って互いに遠慮が無くなってゆき、段々と日常的に対等な喧嘩をするようになってゆく。また次第に互いに相手の存在が自分にとっての特別という位置に入り込んでゆく。そのことを先に自覚したのはジェドで、ロレンツィはジェドが自覚したことで生まれた些細な態度の変化をきっかけに徐々に時間をかけて自覚していくことになる。

現在も二人の仲は悪く、いつも喧嘩ばかりしている。しかし真面目で自分を抑圧しがちだったジェドにとっても、他人と正面から向き合うことを避けていたロレンツィにとっても、互いは遠慮を捨ててぶつかり合える唯一の相手となっている。また遠慮はしないが互いに必要以上に踏み込むこともしないため、そのような適度な距離感がどちらも無意識下で心地良く感じている。

しかしジェドは今の状態を正面から向き合うことから避け続けている、これ以上前進することはないが必要以上に波風が立たない関係に甘えていると考えている節がある。そのため、もう少し本音でぶつかり合う必要があるのではないかと思いつつも、地雷を踏む気はないため見るからに地雷の多そうなロレンツィには踏み込むべきではないのだろうかと少し悩み始めている。

一方ロレンツィはジェドに踏み込まれることを望んでいない。ロレンツィは他人に自分の深くに踏み込ませることを酷く恐れているため、今のジェドとの関係がロレンツィにとっては人間関係の形として一番良い形になっている。“遠慮がいらないながらも一切深く踏み込もうとしてこない人”としてのジェドに何よりの信頼とある種の依存をしているため、変に踏み込まれることがあれば勝手に失望して心を閉ざしてしまう可能性がある。

ジェドはここまで近づいたのならとロレンツィの一番近くにまで近寄ることを望んでいるが、ロレンツィは勝手にこれ以上近づかれることを拒んでいる。

ロレンツィは自身から見たジェドの一面には信頼を置いているが、ジェド本人のことは完全に信頼しているとはまだ言い切れない。それでも他よりは信頼できるようにはなっているが、どこかで他人を信頼することに恐れを抱いているところがあるためまだ壁を作り続けている。

基本的に二人は仲は悪いなりになんだかんだで持ちつ持たれつの関係に落ち着いている。特に戦闘時においてはやけに息が合っており、互いに自分のための行動が自然に相手のサポートにもなっているということが起こるぐらい連携が取れている。普段二人が関わっている理由は利害の一致という面が大きいが、二人が付き合いを続けている根本的な理由はそれ以外のところにある。



ジェドは特に自分の生い立ちをロレンツィに隠そうとはしていないためロレンツィは何気ない会話で知れる程度はジェドの過去を知っている。一方ロレンツィは他人に自分の核心に触れられることを恐れているため、過去の話は絶対にしようとしないためジェドはロレンツィの過去をほとんど知らない。それはロレンツィのトラウマには家族の存在が大きく関わっているのにも関わらず、ジェドはロレンツィの家族に関しては恐らく母親は幼い頃に亡くなっているのだろうというぐらいは察しているだけ、といった程度。

ジェドがシュヴァルツに入った数年後にロレンツィが来たが、幹部に昇格したのはほぼ同時期。幹部となれる者自体少ない中でジェドも昇格は早い方だったがロレンツィは特に異例の早さで昇格した。ただし、ジェドは頭脳と実力の両方を買われての堅実な昇格だったがロレンツィはそうではなかった。ロレンツィは態度は悪いにも関わらず実力が並外れて高く、またその強さもどこか危険を孕んだ強さであったため、その昇格は野放しにしておくには勿体無いからという理由と、危害を及ぼし兼ねないため直接監視するといった目的も含めてのことであったためジェドとはかなり差がある。

どちらも寮に住んでいるが当然のように別室。しかし何かと互いの部屋を行き来する機会があるため合鍵は交換している。仲は悪いが必要以上に相手の部屋を荒らすことはしないだろうという無意識下での信頼が基となっている。

ロレンツィはジェドを苦しませるためよくジェドに毒を与えるが、一方で自身の毒でジェドを殺してしまうことは恐れているため、万一ジェドを殺してしまうことがあればその際は自分も一緒に死ぬ気でいる。またジェドの方も自分がロレンツィの毒で死ぬことがあればそのときは何が何でもロレンツィのことは殺す気でいる。しかしジェドの方はロレンツィに情が湧いてしまっているため実際にそうなってしまった際にロレンツィを殺すことができるかは定かではない。また二人とも互いにそのように思っていることは知らない。

普段喧嘩は多いがその喧嘩は大抵はロレンツィの方から突っかかることで始まる。ジェドは根本的にロレンツィに理解し難いところがあり、また短気で売られた喧嘩はすぐ買ってしまうというだけでジェドの方から先に悪意が向くことは少ないため、ロレンツィの態度が悪くない限りはそれほど二人の間の空気は悪くならない。