君に窒息死




「早く殺してよ、」


卿はわたしに甘い。
セブやベラにだってしないこともわたしにはしてくれる。
例えばーーそう、こうやって膝に乗って向かい合ったって怒らない。
わたしがねだるものは大抵くれるし、わたしの言うことならしぶしぶだけど聞いてくれることが多い。
それなのに、

「駄目だ」
「どうして。わたしは貴方に殺されたいのよ」

このお願いだけは、聞いてくれない。

「どうしてそんなに俺様に殺されたがる?」
「世界で一番愛してる人に殺されるなんて何よりも幸せなことじゃない。これで永遠にわたしは貴方のものになれるし」

こんな話、殆ど毎日してるのに。
何回も聞きたがるなんて、我が君は我儘ね。

「わたし、格好良く生きたいの」
「格好良く?」
「そう。親に言われるまま闇陣営に入って、このまま何処かの純血貴族と結婚して、子供を産んで、そして死んでいくなんて嫌だわ。ああ、つまらない、つまらないーーどうしたって、格好良くは生きられないわ。だったらいっそ、永遠に貴方のものになりたいの」

その言葉を聞くと、卿は喉の奥でクックッと笑った。


「そんなに心配しなくても、お前は俺様のものだろう」

久しぶりに聞く、その言葉。
わたしはこれを待っていたのーーでも、それでも、足りない。

「我儘だな。愛に狂うなど恐ろしい」
「狂愛も愛情の一種よ」

卿のローブのポケットから彼の杖を取り出すと、そのまま握らせてわたしに向けさせる。

「たった一言、呪文を唱えればいいのに」

呪文を唱える気配のない卿に不満げに言えば、彼は杖を投げ捨てた。

「そんなに死にたいのなら、窒息死させてやろう」
「それって、どういうーー」

わたしの言葉は途中で遮られる。深いキスに息が詰まり、息継ぎのために離れようとするも、背中まで回された腕が余計に強く締まってくらくらする。
酸欠で気を失いかけたころ、ようやく解放された。

「魔法で殺すのは早すぎてつまらない。こうやってじわじわと苦しめるのが好きなのだ」
「……とんでもないサディストね」
「だから、そう簡単に殺せなんて言うな」

そうね、貴方となら。
この命が尽きるまで、唇を塞がれるのも悪くないかもしれない。
そう言って微笑むと、卿も軽く微笑み、そしてまた「殺し合い」が始まった。




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