さようならは言わなかった


たった5文字が言えなかった。たった5文字。されど5文字。俺の口から言うには重すぎるその言葉に唇を噛みしめる。
俺が君にその想いを告げるなんて、なんて烏滸がましいのだろうか。あの水族館での出会いから随分と長い付き合いをしている。それでも臆病な俺には踏み出せない一歩だった。

ゴフリと口の中に血が溢れる。ヒューヒューと情けない呼吸音に思わず笑ってしまう。ああ、こんなことになるなら、言えばよかった。今更後悔してももう遅い。
俺の命はここで終わりだろう。日陰で朽ちる。我ながら似合う最期を迎えられるのではないだろうか。

「すず、」

視界がかすみ口を開くの億劫だ。それでも、届かないと知っていても、言わなければ未練が残りそうだった。

「あい、して、る……、」

だから、俺を覚えていてくれ。
たった5文字。されど5文字。
さようならは言わなかった。


シャ鈴さんには「たった5文字が言えなかった」で始まり、「さようならは言わなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり
https://shindanmaker.com/801664



#prevタグ# | #nextタグ#

ALICE+