母娘





「敦くん、あなた、人を殺したことはある?」
「えっ?」
「『人喰い虎』なんて呼ばれていたみたいだけれど、結局死人はゼロ。なら、それ以外は?」
「な、ない、ですけど……。」
「そう。」


「なんて事がありまして、まるで自分は殺したことがあるみたいな言い方でしたけど、実際どうなんですかね?」
「雪乃はああ見えても経験者だよ。自分の異能で母親を焼き殺してるんだ。」
「えっ、」
「今はできる限り加減はしているんだろうけど、火傷の延長で死ぬ人はいるんじゃないかなあ?」
「でも、雪乃さんって社長の娘さんですよね?ってことはつまり……?あれ?でも2人って仲いいよな……?」
「ああ、あの二人は似ているけれど血の繋がりは一切ないよ。義理の父娘さ。彼女が焼き殺したのは実母だからね。」
「太宰さん詳しいですね?」
「風乃さんには随分お世話になったからねぇ。雪乃がこれくらい小さい時から知っているよ。」
「風乃さん?」
「雪乃のお母さんの名前だよ。絶対雪乃の前では言ってはいけない人物だから気をつけてね。焼かれても責任取れないから!」
「話題にしちゃいけないってことは、雪乃さんはお母さんが嫌いなんですか?」
「トラウマって言葉知ってる?」
「さ、さすがの僕でもわかりますよ!……大好きだったけど殺したんですか?」
「いや、雪乃は風乃さんが大嫌いだよ!」
「ええ……。」
「大嫌いだけど、殺したいほどではなかったみたい。(でも、娘に殺されるのを望んでたから彼女は本望を遂げたと思うけどね。)」



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