「よろしゅうなあ、おっしょはん。」
織田作之助いいます、と柘榴色の目を細めた男は私が初めて転生させた文豪である。織田作――と呼んで欲しいそうだ――さんが差し出した手を恐る恐る握る。手袋越しでも伝わる熱に思わずドキリとした。
ああ、生きている。この人たちは列記とした生者だ。どうしてもっと無機質な物にしてくれないのだろうか。侵蝕者のように機械的であればよかったのに、どうして?
「よろしく、お願いします。」
からついた喉を無理やり震わせる。ああ、嫌だなあ。私の指示で人が死んでしまう。いくら何度も転生できるとはいえ、彼らは生きている。
ああ、酷い。私が何をしたというのだろうか。私はこの人たちを殺したくはない。戦わせたくもない。けれども、私にはどうしようも出来ない。戦うために転生させられた彼らに戦うなとも言えない。
泣きたい気持ちを無理矢理抑え、私は笑うしかなかった。