会えない訳



「お前さあ、なんで頑なにレトさんたちと会わないわけ?」

 そう言ってくるキヨの顔は不満そうで思わず笑ってしまう。その反応に「面白要素なくね?」とキヨはますます機嫌を悪くした。それでも笑いながら謝れば彼の機嫌はますます悪くなり私はさらに笑い出す。悪循環もいいところだろう。

「ごめんって言ってるでしょ?」
「ぜってー謝る気ねぇだろ?」
「だって会うつもりないしね?」
「だからなんで?もしかして俺以外嫌いなの?」
「まさか!ありえない!」

 キヨの言葉に大笑いしてしまうのも仕方の無いことだろう。私は彼らの大ファンであると豪語しており視聴者の間でもその事実は有名だ。

「じゃあさ、」
「何と言われようと会わないからね。」
「なんでだよ!」
「なんでも。」
「俺とは会うのに?」
「それとこれとは別。」

 キヨは個人的に声をかけてくれた珍しくも大切な実況仲間だ。個人だから、私はこの関係を続けている。しかしキヨが今必死になって誘っているのはTOP4としての動画の話であって、人気グループの中に私が入る訳にはいかなかった。まあ、その行為が「解釈違いです」と素直に言っても良いのだが、きっと理解はされないだろう。

「意味わかんねぇ、マジで。」
「いいよ、分からなくて。」
「こうなったらぜってー意地でも会わせてやるわ!待ってろよ!」
「嫌だよ!絶対に待たねぇわ!やめろ!」

 この会話を隣の個室で話題に出ていた三人が聞いていたことを糺が知るのは少し先の事であった。


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