裏話



「飲み足りないから二軒目行こうよ〜!」
「行きましょ〜お!」
「こらこら酔っ払いども!大人しく帰れ!」
「えー?牛沢さんはぁ、終電もない夜道を帰れっていうんですかあ?……ま、それでもいっか。」
「えー?女の子がそれは危ないから俺ん家くるぅ?」
「まって。ガッチさんそれは洒落にならんから。」

 ベロベロに酔っ払っている糺を支えるうっしーと酔っ払った糺にちょっかいをかけるガッチさん。そしてそれを面白そうに眺める俺とレトさんという不思議空間が店の邪魔にならない場所で生まれる。
 糺から連絡があった昨夜、急遽レトさんとガッチさんにも連絡を入れて二人の進捗状況を確認しようとして集まったが特に進展はないようで、むしろこの飲み会でガッチさんと糺の距離が縮まった。やりたいゲームがあるという糺が呟いた名前がまさかのバイオハザードで、そのジャンルに関してはガッチさんが四人の中では圧倒的に知識も技量もありその話で盛り上がった結果、糺とガッチさんの酒が進み現状に至る。

「うーん?」
「糺?どうした?」
「うしざあさん、つめた〜い!」
「ちょ、ちょっと、糺?ここ外よ?」
「おやあ?」
「おー?」
「ふふふ、大胆やねえ。」

 何を勘違いしたのかうっしーに抱きついた糺は満足そうに笑う。多分外気が冷たいだけでうっしーの体温は低くないはずだがそれを指摘する人は誰もいなかった。

「もううっしー、糺の事連れて帰れば?」
「はあ⁉」
「おー、それでええんやない?俺らここで帰るからさ。」
「そういうことならちゃんと帰るから安心してよ!」
「いやいやいやいや!待って!本当に待ってください!お願いします!」

 置いていかないで!とガチで焦り始めるうっしーとうっしーに抱きついたまま半分夢の中で話を理解していない糺を見て俺たち三人の心境は「頑張れ」と完全に一致する。何を頑張るのかは、まあ、そういうことだ。

「が、ガッチさん飲み足りないんでしょ⁉俺ん家で飲まない⁉ねえ⁉」
「えー、流石にそんな野暮なことしないよお。」
「キヨとレトルトも!な⁉」
「えー、なんで行かんとあかんの?」
「糺もうっしーと二人きりの方がいいよなー?」
「……んー?」
「あ、これ秒で寝るわ。」

 そう言っている間にも糺の足から力が抜けてうっしーの方に完全に寄りかかっていた。うーん、こうなると自然と目が覚めるまで起きないんだよなあ……。

「……よし!二人きりの夜はまた次回だな!」
「キヨくん?まじで行く気?」
「だってこうなった糺は起きないからうっしーが可哀想なだけになると思うし、糺も運ばなきゃだしね。」
「き、キヨ〜!お前なら助けてくれるって信じてたぜぇ!」
「いや、でも俺正直びっくりしてるからね?うっしーのヘタレさに。まじで。」
「俺はお前と違って大事にしていきたいんだよ。」
「俺だってそうですけどぉ⁉」
「嘘やろ?あ、でもキヨくんはまずはいい人作るところからやね。」
「それレトさんに一番言われたくねぇわ。」
「うるさい!」

 夜中にも関わらずギャーギャーと騒ぐ俺たちの声も糺には届かないようでうっしーに寄り掛かったまますやすやと寝息を立てている。そして全員がうっしーの家で飲み直すことが決まり、糺をうっしーのベッドへ寝せた後悲しく男四人で飲み明かし次の日を迎えたのだった。


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