君に出会った『夜』



 天赦と出会ったのは2017年の夏。とある実況がたまたま目に入ってクリックしたのが悪かった……いや、まあ、結果的には良かったのか。とりあえず物の見事に俺は天赦の実況を追うことになり、我慢できずに俺から声をかけることになったのだ。

        ***

『はい、みなさん、こんばんは。おはよう。こんにちは。天赦です。みなさんが見ている時はどの時間帯でしょうかね。因みに撮影時間は丑三つ時です。……というわけで、今回は日本一ソフトウェアさんから2015年に発売されましたホラーゲーム、【夜廻】をやっていきます!』

 投稿日は2017年8月12日ーー奇しくもそれは俺が夜廻の実況動画をあげた日と同じ。

『このシリーズね、つい最近新作が出ましてね?めちゃめちゃ面白いんですよ!なので、前作を振り返ってから続編を投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。あ、勿論私は夜廻も深夜廻もクリア済みですのでサクサク行きますよぉ!』

 興奮気味にペラペラと喋るあの女の声は今からホラーゲームをする声色ではなく、チュートリアルをさくっりとすすめポロとの別れを惜しみつつお姉ちゃんをあっさりと探し出した。その間死ぬことは一度もなく、むしろ石を囮に出来ることを説明している。そして小説があることと主人公の家庭事情の話をやんわりと説明しながら公園でスコップを拾い家まで帰ってみせた。

『はい、これで逢魔時終わりです。このゲームはね、コレクションの種類も多くて多分道すがら拾ったアイテムで何これ?って思った方もいると思うんですけど、これは後々コレクションした動画もあげますね。なので、次に行きます。』

 その言葉に動画を一旦止めて時間を確認すれば再生時間の三分の一ほどしか進んでおらず俺は動画を見るのをやめた。勿論続きは気になるがこれは俺も実況を投稿し始めたものだ。しかも初見で。

「あー、これは負けてらんねぇ……!」

 普通にうまいし、普通に面白かった。やり慣れていて見やすいし、解説や考察まであって飽きることはない。だからこそ、俺は見るのをやめる。これは全部終わったら見るぞ!
 そうして俺が夜廻の実況を上げ終わった頃に彼女は深夜廻の実況を始めていて一通り見終わった俺は彼女の実況を追うようになったのだった。

「……というわけ。あの実況ほんとスマートで面白いから見たほうがいいよ。」
「天赦がホラー実況者……?」
「一番古い実況がコープスパーティーの時点でお察しだろうが。」
「……まじ?」
「うっしーほんと何も知らないんだな?」
「……、夜廻も深夜廻もやったことあるし大丈夫だろ。うん。う、ん……。」
「天赦ちゃんにホラー耐性とグロ耐性があるのにすごく納得できるなあ。今度何かに誘ってみよう。」
「今ちょっとだけ見てみる?俺も気になるし!」

 そう言ってレトさんがスマホを取り出して検索すればその動画はこの間よりも数字が伸びていて、有名になったあと少し寂しくなりながら、半分は俺が育てたと自慢したくなったのは誰にも言わないでおく。


戻る


twilight
ALICE+