知らぬところで



 それは動画を撮り終えた後の通話中に起こった。

「なあ、キヨ。俺、天赦さんに会ってみてぇんだけどぉ?」
「はあ?」

 ぽつりとなんでもないように呟いたのは牛沢でその呟きを拾い上げたのはキヨだった。この間誘いを断られたばかりというのにこの男は何を言うのだと思ったのは仕方の無いことであり、そして、その呟きに便乗する男があと二人居ることを忘れてはいけない。

「そうそう!俺達も会ってみたいんだけど、まだなの?」
「せや、キヨくんばっかりズルいやん、なあ?」
「んな事言ったって、糺が……あ!ちげぇ!間違った!天赦がダメだって言ってんだからどうにもできねぇよ!」
「ふーん?」

 糺さんって言うんだねぇと言ったのは誰だったのか。キヨは糺本人にこのことを知られれば騒がしく抗議されるだろうなと密かに頭を抱える。

「それ絶対に天赦に言うなよ。バレんのマジで嫌がってるから。」
「いやいやいや、既にキヨくんがバラしてるやん。」
「そうだけどさぁ!それとこれとは別じゃん!?」
「ふはっ、お前、いつぞやの天赦さんと同じこと言ってんぞ。」
「うるせー!」

 とにかく本名バレも会うことも本人がダメと言っているからどうしようもできないとキヨがはっきりと伝えれば三人は唸り声をだした。どうやって会おうか。どうやって会わせようか。四人の思考は一致しており、そのままグダグダと作戦会議を行うのだった。


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