ミネット

今日は初めて見た観客――リブレくんという――はいい人だったな〜とご機嫌モードで帰路につく。背は高かったが多分同年代だろう彼は手先が器用らしい。見物料と称して試作品らしいがブレスレットをくれた。しかしそれをポッケにしまっていたのがいけなかった。帰ってから探してもどこにもそれらしきものが入っていない。……落としたかも!?帰り道を思い出しても雪、雪、雪……。埋もれているかもしれない。どうするか迷ったが私はあのブレスレットをなくすのは嫌だった。初対面で詳細も知らない彼だが、それは彼にとっては私も同じこと。路上で歌っていた小娘に頑張れと言ってくれたのだ。そんな優しい人の思いを無下にする訳にはいかない。一人じゃ無理だから、マニューラに手伝ってもらおう。身振り手振りでマニューラにことを説明して雪道に探索しに行く。

「さ、さむい〜〜!!」

いくら生まれも育ちもエイセツとはいえこの厳しい寒さに慣れることはいつまでもないと思う。どれほど防寒しようが寒さがなくなることはない。それに雪を触っていればなおさらだ。うう、さむい……。途方もない探し物に心が折れそうだった。だがなんとしても見つけたいのも本当だ。

「うう……どこだろう……たしかここら辺を通ったんだけど……。」

「あの、」

「はー…、」

声をかけられたから返事をしようと思ったが言葉は出てこなかった。水色と金色の違う両目をした全身白い美女がこの雪ではありえないはずの薄着で立っていた。

「あの…?」

「ゆ、」

「ゆ?」

「雪女ーーーー!!!!!!!」

ぎゃーー!!!っと大騒ぎする私をよそに雪女ではありませんと困った顔をした女性はトレーナーカードを私に差し出した。…サクマカガチ…?

「サクマさん?」

「どうか、カガチと呼んでください。」

「カガチさん…。寒そう…。」

「寒さに疎いので大丈夫ですよ。それよりも貴女は何をしていたのですか?」

「探し物をしてました!貰い物を落としたらしくて…。」

私の言葉にこの雪の中を探すなんて無謀だとカガチさんは言う。わかっているがどうしても諦めないと返せば、わかりました、と返答があった。わかりました?

「貴女、お名前は?」

「ミネットです!」

「ではミネットさん、あなたはセヴリーヌという名を聞いたことがありますか?」

「せ、セヴ…?」

「……その様子だとなさそうですね。…この地方にいると聞いたのですが…デマかなぁ…。」

「その、セヴなんとかさん?を探してるんですか?」

「ええ、セヴリーヌ、ですよ。」

質問に答えてくれたお礼に探し物を手伝ってくれるらしいカガチさん。その薄着では到底動けるようには見えないが何事もなく雪の中を探し出すから驚いた。寒さに疎いとはよく言うものだと思ったがそれは嘘ではないのかもしれない。寒いけど寒くないってこと…?

「あら?…ミネットさん、これですか?」

「え?…ああーー!!それです!!」

見事雪の中からブレスレットを見つけてくれたカガチさん。素手で雪を触っていたから指先が赤くなっていて痛そうだ。

「ありがとうございます!お礼も兼ねてよければ家でゆっくりしてください!」

「えっ、でも…。」

「遠慮はなしです!ほら、行きましょ!」

私がお礼をしないと気が済まないといえば、では、お言葉に甘えてと笑顔で了承してくれたカガチさん。手を握れば人とは思えぬほどヒヤッとしてちょっとドキッとしたのは内緒だ。
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