あの後のセキサンさんの荒れっぷりは物凄く 、アルラちゃんを突破した中々に手応えのありそうな挑戦者を一方的にタイプも関係なしに蹂躙した。控え室にいたシスイたちですら戦々恐々と視聴していたらしい。それにたまたま遊びに来ていたカグヤさんと兄さんが珍しく口を揃えてあれはないと言うほどだった。こういう時にしかちゃんと顔を合わせる機会がないからと思ったのがまずかったと今では反省している。あの人の事、聞くべきじゃなかった。でもね、まさか、あのセキサンさんが自分のことを理解していないとは思わないじゃない!
「……それ、俺に言ってどうするの?」
「気軽にこんなこと言えるのカナメさんしかいないんですよ。」
「嘘は良くないよ、ミコトちゃん。ミコトちゃんには俺と違って沢山お友達がいるの知ってるからね?」
「だって叔父さん、最近好い人ができたって喜んでたじゃないですか。」
「叔父さんはやめよう。」
確かに関係的には叔父さんだけど年齢はアザミやミコトちゃんのほうが近いからね、とさりげなく母を蔑んだカナメ叔父さん。後で母に言いつけようかと目論みつつも、年齢の事で怒るような人ではないため笑って流されるのがオチだろうと諦めた。
「それよりも、どうしてテンゲくんのイライラが俺に関係するのか全く検討がつかないんだけど、なぜか教えてくれるかい?」
「いや、カナメさんに、というよりは、研究バカなカナメさんですら理解出来た恋心をセキサンさんが理解できてないという話です。」
「ミコトちゃん、さりげなく俺のこと馬鹿にしてるね?」
「だって研究に没頭しすぎて、サザンカさんにそのだらしない格好のままで会ってるの知ってますからね。」
その言葉にカナメさんは、ウッと呻いて胸を抑えた。こうかはばつぐんだ!
「こ、これでも、頑張ってるんだよ?」
「そうですか……。」
「その反応、絶対信じてないよね!?」
くたびれた格好で言われても説得力が皆無であることにこの人は気がついているのだろうか。けれど研究に命を注いでいるような人間が少しでも別の事に意識を持ち始めたのはいい変化といえるだろう。その変化に自分が気づいたからこそ、カナメさんは変わった。でもセキサンさんは違う。自分の気持ちを隠しすぎて自分で見失ってしまった。だから自分の気持ちを理解出来ずにいらいらしているから周りに被害が出るのだ。
「ミコトちゃんも変わったねぇ…。」
「え?」
「昔ならこんな話絶対しなかったよ。」
俺も聞かなかった気がするなあと言って穏やかに笑ったカナメさんに何故か急に恥ずかしくなり私は冷めきった紅茶を飲み干した。
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