屋敷の二階から私は逃げ出すように飛び降りた。決められたレールの上を歩むような人生に嫌気がさした。だから、逃げようって。今まで何不自由なく暮らしてきたツケなんだ。勝手に親が決めた婚約者なんかと結婚なんかしたって、私は幸せなんかになれない。誰も私が逃げようなんて思わないだろうから、気づくのは朝方だろう。それまでに出来るだけ遠くに逃げなければ。そう思うとなりふり構ってなんかいられなかった。だから、私のそばに人があまりいない11時くらいからそわそわしていて、ある程度の準備をして寝静まった12時に部屋の窓から飛び降りた。二十歳を超えてからまさか自分がこんなお転婆なことをしでかすとは思わなかった。でも、逃げるとしたら今しかなかった。
夜中の街は、夜の店の電気とぽつりぽつりとまばらにある街灯だけの明かりしかなかった。
こんなに全力疾走したのは初めてだった。体力があるはずないのだから、体が悲鳴をあげる。それでも走るのを止めなかったのはここから逃げたしたかったからだ。
後ろを振り返れば、屋敷は小さく豆のように小さかった。
無計画で飛び出したので、これからどうするなんて考えてない。野宿…、出来ない。でも、あの家と関わらないように生きるなら、このプライドは捨てるべきで、お嬢様精神なんかもいらない。
私は私の力で生きるべきだ。
肩書きなんかいらない、今は住み込みで働ける場所を探すべきだ。もしくは、今晩だけでも泊めてくれる優しい人を探さなくてはならない。
きっとこんな夜更けにうろつく人は危ない人ばかりだから気をつけなくちゃ。
「あの、君大丈夫?」
道の端っこでうずくまっていたら、男性が1人声をかけてきた。街灯に照らされて、茶色っこい髪色が映し出される。この国っぽくない顔立ちをしていたけれど、優しげだ。
いや、優しくして何かあるとか。気をつけなくちゃ。
「大丈夫です」
「なら良かった。こんな夜中にこの街をうろつくなんて危険だよ」
「………だったらあなただって危ないんじゃないですか」
「俺?あー……そうかも。でも君の方がよっぽど危険だと思うよ」
「いいんです、ここにいるつもりはないんで」
「そんな格好で?俺にはそれだけじゃどこにも行けるようには見えないなあ」
普通ならそう見えるだろう。私はほぼ身一つである。お金が必要なら首にあるネックレスを売ればいいだろう。ピアスや腕時計だっていい。どうにかするつもりだった。
「……あなた名前は?」
「沢田綱吉。君は?」
「名字名前。私、今晩泊めてくれる人探してるの」
「へえ、なら俺の家来る?」
「………あなたが何もしないなら」
「しない。どうせ家出とかなんだろ。一晩くらいなら構わないよ」
「本当に?ありがとう沢田さん」
多分この人なら信用できるかもしれない。私がどれくらい目利きができるかはわからないけど。沢田さんは携帯で電話をしていた。なんでこの人は、こんな街にいたんだろう。この街は治安が悪い。警察なんかはあてにならない。この街の富裕層は自分の家に腕の立つ者を雇って警備している。だから下手に近づく無法者はいなかった。けれども街中はそうもいかない。だから沢田さんのような人がいるには本当にあぶないんじゃないだろうか。
「車呼んだから、少し向こうまで歩こうか」
「はい」
車を呼んだから、って沢田さんはまさかすごい人?だとしたら、それはそれであぶない。
しばらく歩くと黒塗りのリムジンが待っていた。
沢田さんはドアを開けてくれて、不安そうにする私ににっこり笑う。
・
・
時は流れ、一年が経った。
ようやくこの生活に慣れてきた。意外にも私は運動神経がまあまあ良かったらしく鍛えたらそれなりだった。
「沢田さん!」
「? 名前どうしたの」
「あの、任務行ってきます!」
「無理しないでね」
「はい!」
あの時沢田さんに助けられたのは正解だった。沢田さんはマフィアだったけど、最初はびっくりしたけど、今は私もファミリーの一員として歓迎してくれた。今日はいつものように任務に出る前だった。珍しく沢田さんを見かけたので挨拶をして出て行く。
「名前行くよ」
「すみません雲雀さん!」
任務が一緒の雲雀さんに声をかけられる。
「沢田さん!帰ってきたら伺っていいですか?」
「待ってるよ名前」
沢田さんと約束をしてから私は雲雀さんの元へと急いだ。へらへらしていたら雲雀さんに言われた。
「何にやにやしてんの」
「してません!」
「……失敗だけはしないでよ」
「わかってますよ」
自分の力で生きていくのは大変だけど、得るもの大きいって知ることができた。あの家には一生帰らないけど、今はボンゴレが私の家です。
20120115