甘いのはあんまり好きじゃないってのは昔から知ってるんだ。だから昔からバレンタインにあげるチョコレートはビターチョコレートで甘くない。
私はチョコレートはスイートチョコレートがよくて、ホットショコラが好きで、恭弥くんとは真逆。
バレンタインのチョコレートはいつもビターチョコレートをセレクトして、苦手だけど味見をする。


「(……今年も苦い)」


出来上がったチョコレートの中からひとつ味見をする。私の基準で苦ければ、恭弥くんにはちょうどいい。いつからだったけ?恭弥くんにバレンタインにチョコレートをあげていたのは。全然覚えてないけど、小さい頃からあげていたのは確かだ。いつも小言をいいながら恭弥くんは残さず食べてくれる。
そんなところが昔から大好きで、並中の怖い風紀委員長である恭弥くんがいる応接室まで軽い足取りで行けちゃうのだ。
友達には、理解されないけどそれでいいんだ。だって、恭弥くんの良さをみんなに知られたら恭弥くんはかっこいいから、私なんかいらなくなってしまう。だから、このままでいいのだ。結局、それは私の勝手な都合のいい解釈。
本当のところ、恭弥くんがどう思っているかなんて知らないし、聞いたことがない。
もちろん恭弥くんはかっこいいけど、群れるのを嫌うので、浮ついた話の一つだって聞いたことない。正直なところ、女の子に興味があるのかさえ謎である。なさそうな感じがするが、それはそれで私にはちょっと不利であり、逆に興味があるのであればちょっとはいいが大方不安しかない。つまりどちらとも私にとってはあまり利にはならない。
ため息を一つして、出来上がったのを箱に詰めてラッピングをすれば出来上がり。
私はそれを鞄に詰めて、今年こそは!と淡い期待と気合いを込めて家を出たのだった。

***

学校に行くと、教室は独特の匂いと空気を醸し出していた。いつもは何の素振りを見せない男子だっていつになくそわそわしている。女子は女子で友チョコを配ったりしていて、浮かれている。かくいう私も浮かれている女子の一人。
だって、今年は恭弥くんだけにチョコを作った。少し苦味の効いたガトーショコラ。友だちはにやにやしながら私に友チョコをくれた。頑張って、なんて軽口叩くけどちゃんと応援してくれるのは分かっている。
私は軽く笑って、友達と別れて応接室へと向かった。
応接室の前に人は誰もいなかった。中に入ると恭弥くんはソファに寝転がっていた。
恭弥くんは葉っぱが落ちた音でも目覚めるなんて絶対に嘘だ。だって、今寝ているのが現実だ。
どうしよう。寝ているのを起こすのは気が引けるし、起こしたら怒られそうな気がする。
とりあえず、もう一度ここに来よう。
そう決めて応接室を出ようとした。


「帰るの?」
「!?……き、恭弥くん起きてたの?」
「さっき。用があったんじゃない」
「そう。用があったの、でも恭弥くんが寝てたから」
「起きたよ」
「そうだけど! あの、今日、バレンタインだから、これあげる」


すっかり恭弥くんのペースに乗せられてしまったが、仕方ない。チャンスは一回。今年こそ恭弥くんに伝えるんだ。


「恭弥くん」
「なに」
「好きです。ずっと昔から好きでした」
「名前って鈍感だよね」
「?」


鈍感?そんなつもりはない。友達から言われたことなんかないし、まさか恭弥くんに言われるとは思わなかった。


「好きじゃなかったらチョコなんか受け取らないし、お返しもあげないよ」


それって、つまり。


「好きだよ」


真っ直ぐに私を見て言う恭弥くんはすごくカッコ良くて、見惚れてしまう。
だけど、言ってからすぐに私が渡したチョコの箱を開けて、食べ始める。
少しにこりとして言う。


「おいしいよ」
「ありがとう」


恭弥くんの一言がすごく嬉しくて飛び跳ねそうになった。


ビターチョコレートの告白



20120214