私なんかのチョコなんかいらないんじゃないかな。君がチョコが好きなのは知ってるよ、だっていつもカバンに一口チョコが入ってるから。
ほら、今日だって一口チョコが鞄からちょっと見えている。でも、今日の鞄はちょっと違う。いつもはない華やかなラッピングがされた袋がぎっしり入っているのが見える。わざとらしく開けっぴろげてあり、クラスの男の子は恨めしげに見ているのを彼は知っているのだろうか?まあ、彼が女の子をむげにしないのを知っているし、来るもの拒まずだから当たり前かもしれないけど、いくら何でも限度というものがある。
いくら鞄に仕舞いきれないからといって机の引き出しにまで入れておくのはいかがなものだろうか。
そこから更に女の子が骸くんがいない隙を狙ってその中に突っ込んでいっているというのに。
「名字さん、何か怒ってるのですか?」
「怒ってないけど」
「じゃあなぜ不機嫌そうにしてるんですか?」
「別に、そんなこと、…ない…けど…いや、ちょっと…まあ」
曖昧に返事をするとクフフとあの独特な笑い方をする骸くん。そんなところまでかっこいい骸くんは並大抵の中学生じゃない気がする。少しは子供っぽいところとかあるけど、ほとんどは大人びている様子しか見たことがない。
それに、少し不機嫌そうにしているのに気づいた骸くん。
まだまだだなあ、と思い知らされるのと同時にもっと分かってよという矛盾が生じる。
「名字さんもこのチョコ食べますか」
「はあ?何言ってんの骸くん、そのチョコを食べたらファンの子に殺されちゃう」
「それは困りますねぇ」
骸くんは口元に手をあてて、思案げにしている。横目に視線を流している。視線の先は女の子の集団。いつも骸くんに群がって話しかける女の子たちだ。
「でも僕は名字さんなら守りますよ」
「いやいや、意味わかんないから」
視線を女の子たちの集団から私に戻して言う。
それからにこりとする。
その姿が様になる彼はやっぱりかっこいい男の子なのだ。モテるのがよくわかる。
「名字さん」
「ん?」
「僕からのチョコ、受け取って貰えませんか」
「へ、」
「市販のものですが美味しいものなんです。ぜひ名字さんに食べてもらいたい」
骸くんの手にはきれいに包装された箱がある。これ、デパートに売ってるちょっと値段のするチョコだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「っ!」
ガタンガタン!と勢いよく椅子から滑り落ちてしまった私。どうしよう、骸くんの笑顔がきれいで今まで見たことがないくらいきれいだった。それでいて、私の鼓動を早く打ち鳴らすには十分すぎるほどの笑顔だった。まともに骸くんの顔をみることができないし、今の顔を見られたくない。
けれど、それはできずに、骸くんの手が私の顔に添えられる。ぐっと骸くんの方に向けられる。
「クフフ、成功、ですね」
「?」
「かわいいですね。早くこうすれば良かった」
「む、くろ、くん?」
「はい」
「どういうこと?」
「こういうことですよ」
頬に柔らかい感触。
私が目を白黒させていると、骸くんは柔らかい笑みをたたえて私のあたまを撫でる。脳回路がショートしそうだ。
「好きです名前」
「私は────」
私は?
私は骸くんのこと、好きなのかなあ。
「名前の返事はいりません」
「なんで」
それは、と区切って骸くんはいずれ名前は僕のものになるからですと言った。
脳回路は完璧にショート。
きっと、もう骸くんの虜なんだ。
チョコレートクラッシュ
20120216