閻魔さまってすごいんですか。私が彼に向かって言うと彼は無表情のまま答える。キミはそれを聞いてどうしようというのさ。無表情でさほど迫力も無いのに、有無言わせぬものがある。私は初めて彼がコワイ人だと知る。なんでも出来てしまう神さまは私たち人間とは比べものにならないのだ。それがわかった瞬間に私は私がとてもちっぽけな存在なことに気がつく。彼にしてみれば、私たち人間は駒のようなものなのかもしれない。だって、彼は天国か地獄を決めている。それなりの法則にのっとってしているだろうけど、実際どうだか分からない。案外私利私欲で決めているかもしれないのだ。閻魔さまにはどうしてもこうしたい、って思ったことがありますか。私はまた新たな質問を投げかけた。さっきのことには答えてくれそうになかった閻魔さまが今度は答えてくれた。

 あるよ。

 にやりと妖しく笑った閻魔さまにぞっとした。それから口にいきなりかき氷を含んだような、冷や水を浴びせられたような感覚に襲われる。ただ、その姿の閻魔さまは冥界の冷たい感覚を体現しているようで、嗚呼この人は冥界の神さまなんだと感じとった。

 例えば、今だよ名前ちゃん。

 場の空気をどれだけ凍り付かせればこの人の気は収まるのだというのだ。いや、元々こういう人だったんだろう。周りが静かろうが関係ないんだ。今ってどういうことですか閻魔さま。私がそう聞くと閻魔さまはさも面白そうに喉をくつくつと鳴らしている。私はそれに眉をひそめる。閻魔さまは笑うのを止めて私を真っ直ぐに見つめてくる。名前ちゃんさあ、天国も地獄にも行かずにここにいない?閻魔さまは唐突に言い出した。いや、いないです。私はあっさりと閻魔さまの提案を切り捨てる。閻魔さまはへー、と言ってその後は知らんぷり。私はどうしていいか分からずに呆然と立ち尽くすばかりだった。

 たまあにはここに来てよ。

 ……………はい

 よくわからないまま私は閻魔さまと約束をして天国の扉を開けた。

***

 私はたまに閻魔さまの所に行って、お話をする。最近閻魔さまはお茶を出してくれるようになった。それを聞いたら閻魔さまはいつか名前ちゃんにもわかるよと言われた。分かったときにはどうなるかは分からないが、不思議と不安はなかった。


2011/07/21