いつか、消えたいと思った自分がいた。背中に羽が生えてどこかに飛んでいけたらよかったのにね。私はソファに寝転がってテレビに視線を向けたままの妹子に言う。妹子はようやくこちらを向いてげんなりした顔をした。妹子は私の言うことの八割は意味が分からないと言う。つまり八割は理解していないし、理解するつもりもあまりないらしい。
「意味わかってないでしょ」
「いつものことじゃないか」
「ちょっとは理解してよ」
「なら、僕にもわかるように説明したら?」
 名前の言っていることはいつもよく分からない。きっと名前は自分が理解出来ていればいいと思っているんだよ。妹子は冷たく言い放った。
 でも、私はそんな言葉が欲しいんじゃない。ホントはちゃんと理解して、私のことをわかって欲しい。ねえ、そこのところわかってよ妹子。
 妹子はまたテレビへと視線を戻してしまい、私の方になんかちっとも見向きしない。なんで見てくれないの?とは言わないけど、私のことどうでもいいの? 私が妹子の彼女である必要はあるのかな。きっと妹子に言ったら、迷惑がられるけど、妹子はなんにもいわないから私にはわからない。
「名前」
「な、なに?」
「こっちきて」
 妹子は私を膝の上に乗せて抱きかかえる形となった。恥ずかしいとかそんなことよりも、甘えてきた妹子にもの珍しさをおぼえた。
「あのさ、名前のことは大切だから、いつも気にかけてるから」
「うん」
 負けた。妹子は実は私のことを何でもお見通しなのではないだろうか。
「あともう少し名前が僕に分かりやすく説明したら名前のことが理解できるんだけどな」
 意地の悪い顔を覗かせた。
 きっと、彼に勝てる日はこないのかもしれない。

2011/10/30