こんなの今まで見たことないね。えっと、名付けるなら花の呪い?なんだかお伽話に出てきそうな呪いだね。

 大王さまは私の姿を見てそう言った。本当に花の呪いのようだ。顔には小花柄みたいな痣。頭部には咲き乱れる花々。最近では痣が広がってきている。きっと、私は転生出来ないんだ。どこかでそう感じた。近くにいた鬼男に目ですがってみせたけれど、難しい顔をした鬼男と見つめあうだけだった。
「大王さま、これ治りますか」
「どうだろうねぇ……冥界は病院じゃあないし」
「……そうですか」
「ああ! そんな顔しないで、ね。俺も調べてみるから」
「はい」
「鬼男くん名前ちゃんをしばらくお願いね」
「……わかりました」
 鬼男は本当に優しい。別に大王さまの命令だからって、寝床の提供なんかしなくてもいいし、新しい着物だっていらないの。私は鬼男に何にもしてあげられない。非力だ。ただただ進行していく"花の呪い"を見つめるだけ。
 治らない、私の呪い。
 転生すらできない。
「名前ちゃん提案なんだけどさあ」
 ある日大王さまがおっしゃった。それは画期的な提案だった。だって、治らない呪いなのに。
「名前ちゃんから人間止めちゃわない?」
「は……、えーと、どういう……?」
「鬼男くんと同じ鬼にならない?ってこと」
「ですが、」
「他の十王とも話したんだけどね。これが一番いいんじゃないかって結論になったんだよ。花の呪いなんて聞いたことないから治すことばっかり考えていたんだけど、人間じゃなければ平気なんじゃないかって考えに至った。ってことでこうなったわけ、あとは名前ちゃんの意志を聞くだけなんだ。どう?」
「……それでお願いします」
「すぐには転生できないけど、ごめんね」
「そんなことないです」
 大王さまは、強い子だね、と言って私の頭を人撫でした。鬼男はこのことどう思うのかな。優しいけど、実際のところ私をどう思っているのかなんてわからないわけだし…。
「名前、僕と同じになるんだって?」
 お昼、鬼男にたまたま会った。いつも優しい穏やかな表情をしているけど今は、少し怒っていりように見えた。私のこのこと反対だった?
「どんな名前でも名前だから、僕はいいけど名前は本当にそれでいいの?」
「本当に優しいんだね。私は大丈夫だよ。花の呪いがなかったら、色んなことが出来るから楽しみだな」
「うん、そしたら名前に伝えたいことがある」
「それも楽しみにしてるね」
 私は、大王さまに鬼にしてもらった。花の呪いなんて嘘みたいに無くなった。人間に作用するのかな。結局、呪いに関しては分からずじまいだった。
 ひとつ前と違うのは、私が鬼男と恋人同士になったこと。今日も冥界は平和です。

2011/11/24