僕が大王に呼ばれて居酒屋に来たときには既に先輩はできあがっていて、ぐでんぐでんだった。
「あー、おにおーん!」
「おにおーん、じゃないですよ。まったく先輩、飲みすぎですよ」
「飲んでないよ?」
「嘘付け!明らか大王たちが飲んでる酒の種類が違うじゃないですからねっ!?」
「うーん……」
ああ、もう!会話がちぐはぐになっている。話すにもこれじゃ話しようがない。
「ねぇー」
「!?」
いつの間にか先輩は僕の顔のすぐ近くまできていて、据わった目で(それも上目遣い)僕を見てきた。それから肩に手をかけてきて、きゅっとしがみついてきた。自分の顔が紅潮するのがわかって、全身の血が勢いよくぐるぐると全身を駆け巡るような気がした。あはーとかえへーとかなんとか言いながら、ぺたぺたと顔を触ってきた。さしずめ、好奇心旺盛な赤ん坊というところだろうか。
耐えるに耐えられず、ゆるりと先輩の手をよけた。
「鬼男くんつめたーい」
「はぁ、」
「わたしはさぁ鬼男くんのことさ好きなのにさ、」
「え……何て言いましたか」
聞く頃には先輩は僕を背もたれのように使ってすやすやと眠っていた。言い逃げだなんて卑怯だ。
大王たちは一部始終をがっちりと見ていたようで、ニヤニヤと笑っている。今すぐにでも大王を殴りたい衝動に駆られたけれど、先輩を起こしてしまうんではないかと思い実行はできなかった。いやはや残念無念。
「鬼男くんはさー名前ちゃんのこと好きなの?」
「さあ、」
「いやいや、自分のことでしょ?」
「好きでも先輩だから諦めます。先輩になら僕よりもっといい人に出会えますよ」
未だに僕の腕の中で眠る先輩に目配せをしながら大王に言う。
大王は、それ名前ちゃんに言ったら怒られるだろうねとからからと笑った。