飛雄のことをずっと隣で見ていた。
私の中での飛雄との記憶はおそらく幼稚園に通っていた五歳くらいのはず。それより前のことは写真の中でしか知らない。
写真の中で映る私と飛雄は母親にあやされて笑う幼児の姿だ。
小学生の私と飛雄は、周りの目を気にしない無頓着で鈍感な子供だった。私は女の子と教室の中で遊ぶよりも、外で男の子達に混じって昼休みにドッジボールをする方が好きだったし、飛雄は飛雄でバレーに夢中だった。
中学生になった時、決定的に飛雄と違うと思ったことは、夢中になれることがあるかないかの差だった。どうして、飛雄はあんなにもバレーに夢中になれたのだろう。私は何も掴めないままなのに。気がついたら、差ははっきりと物差しのように指し示していた。
私は勉強に力を入れることで、そのことから気を紛らしたし、飛雄は何も気がつかなかった。飛雄はそれどころではなかっただろうけど。
男子バレー部のことなんて、簡単に耳に入った。というよりも、バレー部に所属する同じクラスの男子がわざわざ私に報告してきたのだ。それがどれだけ悔しくて、虚しくて、腹が立ったことだなんて、その男子は知らない。
高校は白鳥沢へ進学した。大学も地元を離れるつもりで、ハイレベルな環境を求めて私は白鳥沢を選んだ。飛雄のいない、初めての学校生活だった。
「飛雄……?」
塾からの帰り道、住宅街を歩いていると見慣れた人影に出くわした。あの道のりは学校からじゃない気がする。
「久しぶり」
「おう」
「部活帰り……?」
自信のない問いかけに飛雄は頷く。まだ、バレーしているのか。好きなことに恵まれた才能って、正しいのか正しくないのか分からない。
神様は沢山のものを授けたけれど、それと同じくらい苦しいものを与える。
中学の時に見た光景は到底、恵まれて望まれて授かったものには見えなかったのだ。
「白鳥沢を倒して、全国に行く」
「え、ああ、……うん」
「それから、迎えにいく」
全国、なんて言葉飛雄には簡単なことみたい言ってしまう。そう考えていた矢先の言葉に私は思考回路がクラッシュを起こす。
「何その約束」
「先輩から教わった」
「それだまされてるって!」
「でも、俺もそうだしちょうどいい」
飛雄のない頭に変な悪知恵を吹きこんだ先輩ってどうなのか。
でも、隣を歩く飛雄は満足そうな顔をしていて、私だけ悶々と考え始めるのは時間の問題だった。
2016/02/26