何年も出入りしていた部屋は、がらんとしていてこんなに広かったのかと感嘆する。
不意に声をかけられて、振り向くと幼馴染みが笑っている。
「名前はこれどうした?」
ひらひらと手に持っているのは私と徹と、一の3人で撮った卒業写真。小中高となんだかんだ一緒に過ごしたので、全部で3枚残っている。彼が見せたのはついこの間高校の卒業式に撮った写真だった。スマホでも撮ったから、データとしてはまだ残ってるし、勿論現像だってしてある。
「それ、持ってくの?」
「名前寂しくないのっ!?」
「徹じゃないんだから、私は平気よ」
「強がってばっかりだなあ」
けらけら笑う彼は少しばかり寂しそう。彼は進学が東京なので、いそいそと準備していて私はそれの手伝い。幼馴染みなだけなのに、何で彼の引越しの手伝いをしているのかと、今更な考えもよぎる。
「みんな、ばらばらだね」
「集まればいいデショ」
遊びにだってくればいいと、付け加える。自分も県外進学なのに、一番近しい存在がそうでなくなる瞬間が訪れるとこんなに空虚な思いになるなんて思わなかった。
「永遠の別れじゃないし、電車で会いに来れるし、何なら俺と付き合う?」
「は?」
「そしたら、もう寂しくないね」
俺も名前も。突然のことに目を真ん丸くするばかりだけど、れはた確かに告白だ。それも、他校にまでファンがいた見てくれだけはカッコイイ幼馴染みに。
準備をしていた手も止まってしまったのに、徹は何でもないように準備を進める。もっと色々と説明することがあるんじゃないだろうか。準備を進める手にはさっきの写真があって、丁寧にしまえばダンボールの蓋をガムテープで閉じた。
「準備完了!名前ありがとう」
「私、全然手伝えてないからお礼なんて…」
「そう?俺は嬉しかったよ」
「そっか」
「さっきの答え考えた?」
「本気なの?」
俺が冗談で言うと思うの。なんて、真剣な表情で言うもんだから、さっきよりも自覚して恥ずかしくなってくる。こんなにモテる幼馴染みがいる割に、私は何ももっているものが無くて、告白なんて慣れていないし、おまけにそんなに綺麗な顔を近づけられて冷静でいられる程経験がないのだ。反射的に彼の顔を自分から引き離すようにすると、不満そうな徹の瞳とかちあう。もう、どうしたいのよ。今の私にはうまくかわす術なんてなかった。
「可愛い」
「そういうの、ヤメテ」
「えー」
ニヤニヤしている顔は一をよくイラつかせるあの表情そのものだ。そうやってからかって、私の反応を楽しんでいるっていうのは長い幼馴染みの付き合いからわかる。そんなことしなくても、私の気持ち知ってるくせに。どうしたら私が喜んだり、悲しんだり、笑ったり、泣いたりとありとあらゆること知ってるくせに。まじまじと見つめれば、ん?とまたにっこり笑う。そんな表情すら私は嬉しい。
こんなに悩んだのに、あっさりと言いのけてしまわれればそれまでだってわかってる。
「からかわないでよ」
「名前だって本気にしてるくせに」
「ほら、そうやって、」
名前がそれでいいなら、俺はもっと本気でいくヨ。
一際真剣な徹に気圧される。もう、それでいいよ。私ね、徹のこと好きよ。
20140328