今年初めて同じクラスになって初めて隣の席になった郭英士くん。わたしは普段郭くんと呼んでいる。実はちょっと呼びづらいなあなんて思っているけれど、そんなことを郭くんに言ったところで何かが変わるわけじゃない。郭くんは他の男の子たちと違って大人びている。考え方からまったく違うように思う。それに、あんまり人を寄せつけたがらない。わたしとの会話だってあんまり弾んだためしがない。わたしは郭くんといっぱい話したいけど、必要以上に踏み込めない雰囲気を持っている。
 だけど、そんな郭くんでも興味を持っているのがサッカーと韓国にいる従兄弟のことだった。郭くんは学校でサッカーをしないでジュニアのクラブチームに入っているそうだ。そのクラブチームはプロの下部組織のジュニアチームで、郭くんは上手なんだって。わたしは授業でしか郭くんがサッカーをしているとこを見たことがないし、郭くんがどれくらいサッカーが上手いのかわからない。でも、この間東京選抜に選ばれた話を聞いた。すごいね!と言ったら郭くんは珍しく笑った。だから、郭くんはサッカーが本当に好きなんだなあと思った。
「ねぇ郭くん、」
「何名字」
「郭くんがちゃんとサッカーをしているところ、見たい」
「見にくる?」
「えっ!?いいの…?」
「今日練習だから来なよ」
「うん…!」
 きっと郭くんがサッカーをしている姿は輝いて見えるんだろうな。授業でしているところだってかっこいいんだから、ちゃんとサッカーをしている姿はもっとかっこいいに違いない。
もっと色んなことが知りたい。そうしたら、ちゃんとあなたに近づけるかな?
「郭くん、わたしもっと郭くんのこと知りたい」
「……いいよ、どこまで知りたい?」
 ニヤリと笑った郭くんはわたしが今まで見たどの表情よりも生き生きとしていた。

2011/10/10