部員の衣装合わせを眺めながら考えていた。あいつが袖を通した衣装は何でああも綺麗なのかと。鹿島が衣装合わせをしても袖丈など確認してもいつも通りかっこいいなと思うだけなのに、あいつが切るドレスはきらきら、ふわふわよく似合うのだ。
「ほーりちゃん!疲れてない?大丈夫?」
「大丈夫だ。少し考え事してた」
「なに考えてたの?」
 にやにやしながら聞いてくるこいつのことを考えてたなんて言える訳もなく適当にごまかす。ああ、これは目に毒だ。肩がむき出しになった肌、浮き出た鎖骨のライン。脚好きは公言しているが、彼女の場合全部が全部気になる。
「あのさー、堀ちゃん。今回の演目だけど、短い劇追加して一緒にやろうよ」
「何でいきなり」
「鹿島くんと話してたの」
 いいでしょ?と問いかけるあいつに俺はどうしようもなく甘い自覚がある。だからこそ、そんな勝手に決める訳にもいかないのだ。
「お前こういうのでもいいの?」
「え、ちょ、あの」
 腰に手を回して引き寄せれば、慌てた声。
 からかってやろうか、そんな考えが頭に浮かぶ。
「俺と鹿島、どっち選ぶんだ」
「えーと…………堀ちゃん、です」
 真っ赤な顔を両手で隠すようにしているが、あいにく耳まで赤いので意味はない。
 こんな反応されれば、自惚れなんかじゃなく期待するのは仕方無いと思う。
 抱き寄せた腕を緩めてしゃがんでいる俺に合うように彼女をしゃがませる。
 相変わらず隠したままなので、手を除ければまだ赤い顔。おまけに泣きそうな表情をしている。
「その顔は反則だろ」
「したくて、してるんじゃないし!」
 そうだったな、そう思い今度は頭から抱き寄せる。
「あとで何するか決めるぞ」
「う、うん」
 こっそり後頭部に唇を寄せた。

2014/09/12