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「それ、は…」
音也衛門が取りだした金属の枷は、2組あった。
「色々計画は狂ったけど、とりあえず足と手に付けとこうかな」
「あ、ちょっとまっ、」
トキヤの静止の声もむなしく、がちゃんと枷がはめられる。音也衛門はごめんねと笑った。
「逃げないって言葉、信じるよ。……けど、やっぱり不安だから」
動きにくいと思うけど心配しないでねと、漸く音也衛門はトキヤの上から退いた。同時にトキヤの上体も起こす。
「俺、暫くは任務お休みだからずっとここにいる。だからお世話は任せてね」
「私は、ずっとここで生活をするのですか?」
「ん? この部屋嫌?」
「いえ、寧ろ生活感が溢れていて驚き…というか」
これがここでの捕虜生活なのだと言われればそれまでだが、普通ここまで待遇がいいことはない。
「あははー汚かった? トキヤが起きる前にちょっと掃除したんだけどなー。俺、一度持っちゃうと手放せないからすぐ部屋汚くなるんだよね」
音也衛門は立ち上がると、押し入れの方へ向かっていく。ほら見てトキヤ、と押し入れの中が丸見えになった。
「き、汚い…!」
「もう整理できなくて大変なんだよねー」
押し入れには物が雑多に入れられている。本当にこの部屋はこの男にとってなんなのだろうとトキヤは考え、そして気付く。
「あの」
「ん?」
「もしかしてここは、この部屋は」
「うん」
言ってなかったっけ?と音也衛門は首を傾げた。
「俺の部屋だよ。あんまり使ってなかったけど」
今日何度目かの衝撃である。何故私はこの男の自室に連れ込まれているのだろうか。
「何故、こんなところに私を」
素直に疑問をぶつけると、音也衛門はこれ言っていいのかなあと言いながらトキヤの傍に戻ってきて、後ろからトキヤを抱えて膝の間に挟んだ。
「あのね、トキヤを殺さないで連れて帰ってきて怒られたんだ。でもこいつ影武者だから情報引き出せますって俺とセシル丸で説明して、そしたら拷問にかけるとか言い出したから……トキヤに傷付けられたくなかったから、俺に全部任せてってお願いしたんだー」
身長の関係で、音也衛門が喋る度に吐息がかかる。くすぐったさに身を捩りながらも、トキヤは逃げなかった。逃げられないということもあったのだが。
「逃げ出すようなことしたら今度こそ殺します。逃げなくても変なマネされてたら殺します。だから俺に任せてくださいってね」
「……ばかですか、ほんとうに」
「うん、ばかでいいよ。好きになっちゃったんだもんね、トキヤのこと」
じゃらり、と手首と足首の枷が音をたてる。
「でもね」
不意に音也衛門の腕が伸びて、トキヤの頬を撫でた。
「情報が欲しいのはほんと」
トキヤはきゅ、と唇を引き結んだ。絶対に、何をされても話さない。自分の情報ならいくらでも教えてやる。けれど、真影や翔ノ助、他の皆のことは何一つ喋ったりしない。
「私は何も話しませんよ」
「今はね」
ちゅ、と音也衛門の唇がトキヤの首筋に触れた。
「絶対俺のものにして、口割らせてあげるから」
小さく紡がれたその言葉は今までの音也衛門のそれとは違い、トキヤはぞくりと背筋を震わせた。