お砂糖煮詰めた地獄で待ってる
クラピカが除念を終えたクロロに出会ってしまったのは一週間前。そのときに捕らわれたクラピカはクロロが用意した部屋で日々を過ごすことになった。与えられたのは食事と寝床と、外に出歩けないクラピカの為に用意された膨大な量の本。
「お前がこの部屋で念を使ったとき、若しくはこの部屋から一歩でも出たとき」
クロロはクラピカに脅しをかけた。
「すぐにお前の仲間を殺す」
クロロにとっては生きた緋の目のコレクション。飽きるまで我慢すればそれで終わり。ゴンやキルア、レオリオに迷惑をかけるわけにはいかない。それが分かっていても、クラピカは感情を失いたかった。
*
「クラピカ」
クロロは椅子に座って今日も読書に耽るクラピカに影を落とす。
「お前、処女か」
何の前触れもなく、突然思ってもみなかったことを問われたクラピカは一瞬動きを止め、そしてクロロを睨み付けた。
「黙れ変態」
そう言ってクラピカが拳を放つが、クロロはそれを簡単に捕える。
「どうなんだ」
「貴様と話すことなどない」
「処女なのか?」
「だからっ、」
がたりと立ち上がったクラピカにキスをひとつ。文句ごと飲み込めば大人しくなった。
「お前、女だろう」
瞳が緋色にもえる。綺麗だ。
「俺がもらってやる。お前の初めて」
馬鹿か、とクラピカが小さく呟く。クロロの口元を手の平で覆い、そのまま自分から引き離した。
「クラピカ?」
「私の名を口にするな。吐き気がする」
クラピカが椅子から立ち上がりクロロに背を向けた。どうやら新たな本を取りに行くらしい。クロロはその背中を見て、笑った。
*
クラピカ、と声をかけられて顔を上げる。クラピカは舌打ちをした。クロロは朝から出掛けていたはずだ。クロロが黒いコートを羽織って外出をした日は、ほとんど1日帰ってこない。だからと言って念を使えないクラピカができることは限られているが、クロロが視界に入らないというだけで少し気分を落ち着かせることもできた。それなのに、こんなに早く帰ってくるとは思いもしていなかった。
「相変わらず行儀よく椅子に座って読書か」
「私の邪魔をするな」
クラピカは冷たくそう言い放つ。クロロはたいして気にした様子も見せずに続けて話しかけた。
「いい加減正直に答える気になったか?」
「何をだ」
「何故性別を偽る?」
「しつこい」
「なあ」
「……何度も言っているだろう」
クラピカがクロロを睨むも、クロロは目を細めるだけだ。痺れを切らしたクラピカが今日も席を立つ。
「二度と私に話しかけるな」
そう言って背を向けたクラピカの腰に、クロロは腕をまわして引き寄せた。
「っな、」
反射的に鎖を具現化しようとするクラピカの動きに、いいのか、とクロロが耳元で囁けば、クラピカの体はぴくりと動きを止めた。片方の手でクラピカの口を塞いで、もう片方の手でシャツのボタンをひとつひとつ外していく。クロロの手の平の中で小さくクラピカは悲鳴をあげる。クロロの腕は止まらない。力の差は圧倒的だった。ぷち、と最後のボタンが外れた。
「やっぱり、女だ」
こっちも、とクロロはクラピカの股の間に足を割りこませる。瞬間、がぶり、と手の平を噛まれた。
「……痛いな」
腕の間からひらりと逃げたクラピカの目元は赤い。
「これで私の弱みを握ったつもりか! ふざけていると痛い目に遭うぞ」
クラピカの瞳が緋色にもえる。
「ふふっ」
こみ上げる笑いを抑えることができずに、クロロは口の端をつり上げた。
(手に入りにくいものほど欲しくなる)
クラピカには逃げ場などない。クロロはゆっくりとクラピカを追い詰める。
「さあ逃げろ。クラピカ」
(この狭い檻の中で、最後まで)
「……ゲスが」
(そしてお前を囚えてやる)