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――――まだ、まだ俺は折れてない。戦える。
清光は血が垂れる右腕を押さえて立ち上がった。
「清光! 中傷だ、帰るぞ!」
安定は清光の腕を掴むが、その手は振り払われた。
「おい……?」
「俺もう、傷ついちゃったし」
清光は一歩一歩、前に進んでいた。
「こんなボロボロの俺、主は愛してくれないし」
振り向いた清光の顔はひどく歪んでいた。
「せめて何か持って帰らないとさ、帰れないだろ?」
そう言って安定に背を向けて清光は走り出した。
「清光!」
安定が声をあげれば、他の皆も気付いたようで何事だと安定に問う。
「アイツ、中傷負ってるくせにまだ突っ込む気だ」
「なに!? 俺たちもそろそろヤバいし撤退だろ!?」
「あのバカ……!」
驚く獅子王の横を大具利伽羅が走り抜ける。それに続くように江雪も次郎太刀も清光を追った。
「安定、いけるか?」
「……行くしかないでしょ」
「だよな」
3人に遅れて安定と獅子王も清光の後を追った。
「主ー! 主いるー?」
ドタバタと本丸に騒がしい音が響き渡る。出陣していた第一部隊が帰ったのだろう。次郎太刀の大きな声も同時に響いて、審神者はやれやれと様子を見に行った。
「おかえりなさい。どうでした、か……」
帰還した第一部隊を見るなり審神者は瞳を見開いた。大具利伽羅に背負われているのはぐったりとしている清光で、ぽたぽたと垂れる血液のにおいにくらりと眩暈がする。
「清光……?」
一歩、足を踏み出して呼びかける。清光は意識がないのか何も話さなかった。その瞬間、体から体温が一気に抜けたような気がして、審神者は清光の手を取る。
「清光! 清光! 起きなさい!」
清光、と必死に呼びかける審神者の顔は、これまで見たどの表情よりも人間味を帯びていた。ぴくりとも動かない清光への呼びかけを審神者はやめない。誰もが動けずにいたここで声をあげたのは、江雪だった。
「落ち着いてください、主。彼はまだ折れてはいません」
江雪は審神者の肩を掴んでやんわりと清光から引き離す。その隙に次郎太刀が「急いで手入れ部屋よ!」と清光を背負った大具利伽羅を中へと連れて行った。
「主、大丈夫か?」
ぼうっとしている審神者に獅子王が心配そうな顔を向ける。審神者は瞼を閉じて大きく深呼吸をした。
「……大丈夫ですよ。取り乱してしまってすみません」
そこにいたのは皆がよく知る主の姿だった。落ち着きましょう、と江雪が審神者を誘導する。獅子王もよほど心配なのかその後を着いていった。安定はひとりそこに立ち尽くしたまま、審神者の背中を睨みつける。
(お前のせいで、アイツは)