初めてのキスはなんの味



今年もまた、こたつで年を越してしまった。
朝一番に起きた晴矢は、こたつの中で複雑に絡み合った自分たちの足の感覚にため息を吐いた。どうもこたつでぬくぬくとしている間に3人とも寝てしまったらしい。
「おーい風介ー、起きろよー」
恐らく風介の足であろうと勝手に予想してそれをげしげしと蹴る。その直後に「なに?」と返事をしたのは、風介ではなくヒロトであった。
「お前かよ」
「俺で悪かったね。風介まだ寝てるの?」
「ああ」
「ちょっと風介起きてよ。君が上に乗っけてるせいで足感覚ないんだけど」
ヒロトの片足は風介の足の下にあるらしい。風介の寝起きが悪いことは分かっていたことなのに、何故足を下に入れてしまったのか。いや、風介が後から足を上に乗せたのか。
「晴矢、風介起こしてよー」
「やだよさみいじゃん」
「俺動けないんだってば感覚ないから。ご飯用意してあげるから!」
「…しょうがねーな」
もぞもぞとこたつから出た晴矢は、風介のいる自分の丁度反対側に移動した。気持ち良さそうに眠る風介の頬をぷにとつついてみる。
「風介ー朝だぞー」
うんともすんとも反応がない。おい風介、と揺さぶってみても、ん、と声を出すだけで起きはしない。
「晴矢、せめて風介の足をどかして…!」
限界らしいヒロトの訴えを聞き、晴矢はこたつに足を突っ込んで風介の足をどかせる。じわりじわりとくる痺れにヒロトは歯をくいしばりながらキッチンへと向かった。
「おい風介いい加減起きろって」
揺さぶるだけではなく、軽く叩いてみたり頬を引っ張ってみたりと色々試してはみたが、何をしても起きる気配がない。晴矢はふう、とひとつ息を吐いて、ヒロトから見えないように姿勢を低く風介に近付く。
最終手段である。
とりあえず指で鼻をつまんでから口を塞いだ。年が明けてから初めてのキスだった。
暫くそうしていると、呼吸が苦しくなったのであろう風介が瞼をゆっくりと持ち上げる。
「ん……は、るや……?」
「おう。お前が起きねえから今年初のキスがこんなんになっちまったじゃねえか」
風介は寝起きでまだ回転しきっていないのであろう頭で晴矢の言葉の意味を理解し、すまない、と眠たそうに目を擦って座った。そして晴矢の首に手をまわす。
「今年もよろしくな、晴矢」
「……こちらこそ、な」
キッチンから「はいそこ朝からイチャイチャしなーい」とヒロトの声が聞こえて、2人は目を合わせて笑った。