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カタカタっと探偵事務所の階段から音が近づいてきた。灰原は、お茶菓子を頬ぼりながら「時間ぴったりね」と言った。
本当に時間厳守な工藤新一に蘭が一番驚くだろうな…。長針がてっぺんを刺したと同時に探偵事務所の扉が開いた。

「悪りぃ、遅くなった」

俺の声で平然と怪盗KIDは俺らの前に現れた。もちろん、時間通りに表れた俺に驚く蘭はそれが、KIDだとは微塵も思ってねぇ。そして、その工藤新一を席に座るように園子が薦めるが「ゆっくりしてぇけど、すぐに行かねぇと」と言って鞄から用紙を取り出してそのまま話始めた。

「お前らも、王位継承の儀の事は知ってるよな?その日と同時に日本に輸入されるこの健康サプリ知ってるか?」
「あぁなんか雑誌で見たかも」
「ネットでも期待されてるよね」

蘭と園子はその健康サプリの存在を知っていた。灰原も名前だけなら知っているようだ。
健康サプリなんて効果は個人差あってお金の無駄だと俺は思うし薬に頼って健康になれるなんて虫のいい話なんてあるわけねぇんだよ。そしてここにいる全員が健康サプリには無縁の人間だ。「これが、どうしたの?」と蘭が工藤新一へ問いかけた。するとやつは、口角を上げて待ってましたっとい言わん顔で話始めた。

「このサプリの原料を見てくれ」

用紙に書かれた原料を一つずつ読み上げていき、灰原が「tisa」と言った。すると「ご名答」と一人の拍手が小さく響いた。

「これは、チサ皇女の血だ」

一瞬の静寂を一転させる蘭と園子の悲鳴が事務所内に響いた。

「チサ皇女には、怪我を治せると噂がある。多分、それは皇族に伝わる言い伝えで、もしこれが本当だったら彼女は王位継承が取り下げになる。そして、王族から剥脱される。」
「待って!新一!どうして、新一がこれを知っているの?」
「依頼を受けたんだ。この王国のある伯爵からな。チサ皇女はご自身の血を削って国を豊かにしょうとしていて、我々ではもう止める事はできないってな?」

その話を聞いて園子は「自国のために自分でやっているならいいんじゃないの?」と不思議そうに言うと灰原が「知られていない事が問題なのよ」と答えた。


原料表記を見る限りに、チサ皇女は自分の血を使ってますっとは言ってないようだ。それは国民を騙している事と同じだ。ニュースではチサ皇女は慈悲深く心優しいと多くの民から慕われている。でも、国民のためという理由があるのなら取り下げにはならねぇと思うけどな…。

「新一お兄ちゃん、チサ皇女様は人々に好かれているって聞いたよ?これが本当でも、王位継承は取り消しにならないと思うよ」
「これだけならな?」

そういってまた別の何枚か纏められている用紙を取り出した。
その用紙を出して一通り話終えたKIDはこの場を去った。


KIDが置いていった用紙を一晩穴が開くまで読み込んんだ。これは読めば読むほど、チサ皇女の印象がニュースキャスターから言われていたものと異なる。

「人は見かけによらないってこの事かしら?」
「国民のために命を削り、国民に愛されてる皇女が、自分の家族を殺すなんて誰も思わねぇだろう」
「でも、この資料によると、家族で出かける予定だった日にチサ皇女は体調不良で外出が出来なくなり、その代わりに昼食が用意して家族に持たせた。その昼食に毒物が混入しており、即死。そしてそれを今回工藤新一こと怪盗KIDに依頼した伯爵がチサ皇女のお命を汚さないように隠していたって書かれているわよ?」
「んな、ことはわかってるよ」
「じゃあ、何?KIDがあなたに伝えた理由?それとも、家族を殺した理由?」
「敢えて言うなら、両方だな」

そう答えると灰原はため息混じりに「この推理オタク」と呆れていた。


そもそもKIDは皆既月食でチサ皇女の元に現れる宝石を手に入れるだけのはずなのに、なんでここまで、調べたんだ?なんで、ここまで首をつ込んだんだ?あいつは面倒ごとに巻き込まれないように回避できる。でも、それをしなかった。なぜだ?考えれば考えるほどKIDの今回の行動は謎めいていく。そして、その謎が深まること望んでいたかのようにチサ皇女に入国日がやってきた。

テレビのニュースもネットニュースも新聞の一面も彼女が独り占めしていた。その笑顔はどうも家族を殺している罪人には見えない程綺麗だった。




皆既月食前日。

おれ達(少年探偵団、灰原、おっちゃん、蘭、阿笠博士)は園子の友人として、特別に応接間へ通してもらえる事になった。

『お初お目にかかります、みなさん。チサと申します』

それはまるで御伽話に現れるお姫様のように綺麗で透き通った声で、にこりっと微笑んだ。元太光彦おっちゃんは「…すげぇ」と言葉を失っていた。歩や蘭は「可愛い!!!」とチサ皇女に見惚れていた。お世辞抜きで可愛らし見た目だとオレも思う。けど、伯爵が言っていた事が本当ならこの人は殺人の罪を隠している。真実を見つけ出すためには、少しでも多く情報を得ないといけない。

「あまり、かしこまらないでください。ゆっくりとご一緒にお茶でも如何ですか?」
「は、はい!」
「チサ皇女様はお姫様みたいですね!」
「ふふっお褒め頂けて光栄です。でもお姫様も皇女様は寂しいので、チサとお呼びください」
「いや!いやそれは無理です!!」

メイドや執事が速やかにお茶の準備を整えると一人の執事を残して足速に部屋を後にした。「なんか、絵本とかで見るお姫様のティータイムだとメイドさんいっぱいなのに、みんないなくなちゃったね」と御伽話と現実の差に悲しそうに言うと「あ、明日の支度で忙しいみたいなの!ごめんね?」とチサ皇女は子供の夢を守った。でも、扉の外にも衛兵がいる気配がない。「チサ皇女には、護衛はいないの?」とオレは尋ねた。

「ええ、いないわ。強いて言えば、彼ぐらいかしら」

特別間に残った一人の執事を指した。その時、彼女の手がイヤリングで当たり、花の形をしたイヤリングの裏側に赤い光が見えた。「それっ!」とみんなの視線がチサ皇女が指した先の人物に注目が浴びている瞬間、彼女は執事を指し手とは反対の手を口元へ寄せて人差し指を立てた。あまりに自然の出来事で、声に出してしまう所だった。あれは、間違えなく盗聴器。彼女は、その盗聴器の存在を知らないふりをしながら明日の王位継承の儀が緊張するっと笑っていた。


皇女様との対面時間が終わり、席をたつ皇女様がオレ達へ「どうぞ、明日をお楽しください」と言って部屋から出て行った。


オレの隣に座っていた灰原が「いいお姫様ね」と言った。あぁ本当にいい姫様だよ。彼女はきっと誰かに罪を着せらている。でもそれに気づいてないフリをしている。そして、チサ皇女へ罪を着せているヤツを暴いたら、KIDは宝石を分けて貰う約束でもしたんだろう。だから、わざわざ工藤新一になってオレの前に現れた。罪を着せたやつを暴いて、お前の作戦もおれが暴いてやるよ!待ってろよ、KID!!


ーーーーーーー



おやおや、さすが名探偵。もう気づいたか?ニュースキャスターは嘘なんてついてねぇ。この姫のぬれ衣を洗い流してくれ。お前なら余裕だろう?俺はそろそろ持ち場の最終確認でもしてくっか。名探偵の元から離れるとある男が「おい」と俺を呼び止めたので振り返った。


「おい、大丈夫だろうな?」
「もちろん、問題ありませんよ、王太子様」
「もし万が一、チサに何かあった場合は俺は一番にお前を差し出す」
「それは困ります…約束どりチサ皇女様の宝石は頂戴いたします」
「それは、チサに何もなかったらの報酬だろう」

そう言い残して、王太子様こと、チサ皇女様の実の兄は俺の元から離れて行った。

チサ皇女の家族は誰も殺されていない。
殺そうとした者は複数いるっと皇帝ことチサ皇女の実の父親はお考えになり、毒殺されたように見せつけた。そして、多くの反逆者を陰に潜んで見つけ出しては、証拠を集めていた。チサ皇女が十六を迎えた時、皆既月食の訪れの知られを受けた。
反逆者の主犯は、武力で国を圧制したいようで、日本であのサプリを売り物資金にするらしい。日本は他国よりも薬を手に取る物が多いから騙し取るには丁度いいってことでな。主犯を見つけ出すのは名探偵に任せて俺は、最終確認っと応接間の扉から離れようとしたら「お〜い」と呼ぶ声に勢いよく扉を開けた。

「お呼び出したか?姫様」
「これ、美味しかった!」

そんだけで呼ぶな!!と怒り抑えながら「シェフにお伝えいたします」とにっこり微笑むと姫さまは首を傾げて「ふふっ、ええ、よろしくね?また食べたいともお伝えください」と笑った。
見た目は、綺麗に着飾っているから気づけなかったけどこの姫は俺とあまり年齢は変わらない。でも、観察力や状況判断が異常に高い。今お褒めに預かったお茶菓子もシェフが用意したのではない事に気づいている、王太子さま(チサ皇女の兄)より、俺ら以外が作る物をチサに与えるな!とご命令を受けている。あのシスコン王太子のせいで俺の仕事が増えまくった。絶対にチサ皇女の宝石は貰ってやるからな!!




9654;︎#NEA land君に奪われた瞳