わがままラブラドライト


今日もこの時間がやって来た。
いや、この時間のために生きていると言っても過言でない。

「さあ、愛しきアズールのもとへ!」

「あっ、ナマエじゃん。もう来たの?」
「アズールは?」
「…本当にそればっかでムカつくなぁ〜。アズールはジェイドと会議中」
「えぇ〜じゃあちょっとしか話せないじゃない」
「オレと遊ぼ」
「何する?」

ナマエは基本的に頭がおかしい(ジェイド談)が、アズールと居ないときは比較的マシだ。
特にフロイドと二人でいる時は悪ガキさながら、と言ったところである。
二人がじっとしていることはあまりない。こういう所は息がピッタリであった。

「オレさ〜久しぶりにドラムしたくなったんだけどナマエ出せる?」
「出せるわ!私が歌って二人で踊るのね!!」
「そうそう!早くやろ〜」

ナマエは便利な道具箱と思われていることには気付いていなかった。
自身の楽器倉庫からドラムを出す。今までに何度も彼に貸したドラムだ。
序でにギターも出す。メロディーはピアノだと一番綺麗に作ることができるが、フロイドと一緒の場合は話が変わる。いつでも手放せる準備をして演奏するのだ。

彼女が得意なのは呼び寄せ呪文と防音呪文だ。職業柄よく使う魔法たちであった。
防音呪文を部屋にかけて、喉の調子を上げ、ギターの音を確認する。フロイドの準備も終わって、楽しい時間の始まりだ。

♥


「あ〜、飽きた」
「そう?じゃあやめましょ」

フロイドはナマエのそういう所が気に入っていた。自分が飽きたといえばすぐに次の面白いことを一緒にしてくれる。
遊び相手に一番良い相手だった。学園にナマエがいたら暇つぶしになったのに。そう思ったことは何度もあった。

ナマエが歌いながらギターを弾いて、フロイドがドラムを叩く。そしたら踊りたくなってバチを手放すとナマエもギターを下ろして歌だけで二人は踊るのだ。踊るのはフロイドの気が済むまで。終わったら驚きの早さで違うことをする。
もしかしたら自分の双子はナマエだったのかもしれないと思うほど、彼女との遊びは息ピッタリであった。

「ナマエ面白い話ない?」
「たっくさんあるわ。そうね、この前女の子のお客様がきたのよ」
「知ってるヤツ?」
「そう!そうなの!覚えてるかしら、青髪でポニーテールの子よ」
「あ〜…あれじゃね、昔ナマエのペンダント持っていったヤツ」
「女の子って!!言ってるでしょもう!!!!」

そう言ってナマエは寝転んでいるフロイドの背中に寝転んだ。側から見るとかなりマヌケだ。
二人がおしゃべりする時は大体どちらかがぬいぐるみのようになって、片方がしがみつく。
二人なりのコミニュケーションなのだが、アズールとジェイドには分かってもらえず、またよくわからないことをしていると呆れられるだけなのだが。

「そういえばあん時どうしたの?ペンダントなかったら帰れねーじゃん」
「あの時はフロイドとジェイドが取り返してたじゃない…なんで忘れてるのよ」
「そうだっけ…?」
「まあいいわ、それで続きよ」

彼女のペンダントは特殊で、簡単にいうと家の鍵のようなものだ。
あの家は、まさに水槽と呼ぶにふさわしい所で、簡単には出してもらえず、学校から帰れば次の日までその中で過ごさねばならない。それを無くしたとなれば、最悪死ぬ可能性だってあったのだ。
今となってはもう無くなっているが、あの時そんな馬鹿みたいなものをオレたちはわざわざ取りに行ったのか。フロイドは一切の事を忘れていた。

「あの子がね、私の歌がどんなに酷いか聞きにきたわよって言ってね」
「ナマエんとこのチケットって高額じゃなかったっけ」
「そうなのよ!もう本当それが面白くてね、結局その子の彼氏はサインとハグしてって言ってきてね、彼女すごい顔で帰って行ったのよ」
「え?ハグしたの?」
「?そうよ。だってそっちの方が面白いじゃない」

ナマエがそういうと、今まで下でニコニコ聞いていたのに、急に真顔になった。
そして自分が起き上がる勢いでナマエをひっくり返して、上にのしかかった。
ナマエは人の姿を取ると、頭一つ分以上フロイドと身長差がでる。
そんな大男にのしかかられたらいうまでもなく苦しい。しかもナマエはアズールに並んでも見劣りしないようにとしなやかな身体をキープしている。筋肉は程よくあるが、全体的に細いのだ。

「グエッ」
「あ〜あ、面白く無くなっちった」
「苦しい〜!退いてちょうだい!!」
「あは、これ面白いね」
「私は面白くないのよ!!か弱い腰が折れちゃうわ!」
「ええ〜しょうがないなぁ」

フロイドは渋々そのまま下に下がって言った。
そして顔がお腹あたりにきたところで、腕を組んで顎をのせた。つまり腹に彼の頭の重量がほぼ乗っていると言っても過言でない。

「おぐっ」
「何その声、どこから出てんの」
「どこって、…あはは、何これ面白い!!」
「ナマエが喋ったらオレの頭揺れるね」
「うふふ、おなかにフロイドの声が響いて変な感じ、ふふ」

その後五分ほどそのまま遊んでいた。
フロイドがわざとカチカチ歯を鳴らしたり、ナマエも自身が出せる一番低い声を震わせたり、フロイドがお腹に顔を埋めたと思ったらナマエが腹筋で起こそうとしたり、まるで小さい子供が遊んでいるような絵面だ。
フロイドがお腹にグリグリと顔を押し付けて、ナマエが耳を引っ張って起こそうとしていた時に二人が帰ってきた。

「…何してるんです?」
「ナマエのお腹で遊んでる」
「フロイドの顔で遊んでるのよ」

この後フロイドがジェイドに引っ張られてズリズリと下がるのを見てみんなで大笑いした。




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ツユシグレ