タフィーは呪う


いつも通り、植物園でレオナくんとお昼寝をした後。
久しぶりに作ったマフィンをがきちんと出来ているか確かめるために寮に戻ろうとすると手を掴まれた。

「どこへ行くつもりだ?今日は図書室へ行く日だろ」
「自室。お菓子を作ったから確認しに行こうと思って」
「だから甘い匂いがしたのか。…俺も行く」
「レオナくんも食べたいの?」
「いいから行くぞ」

腹に手が回されて、グッと肩まで引き上げられた。所謂俵抱きというやつだ。腹部が痛むため嫌だと今までも何度か言ったのに1度も聞き入れられずにいる。もはや今となってはこの移動方法が通常になってしまった。

しかしだからと言ってお尻を触っていいとは言ってない。

「レオナくんどこ触って…」

ドガッ!カラカラ…

「…お前の部屋は入る前に爆発する仕様か?」
「違います」

*


私の部屋には許可した人以外は入れないようにしてあり、許可していない人が足を踏み入れると呪文が反応して反発の力で身体を持ち上げて押し出す様になっている。
つまり簡単にいうと吹っ飛ぶ。

「…フロイドくん。何度と申し上げましたよね?こうなるから勝手に入らないようにと」
「いけると思ったんだけどな〜。グラミーせんせぇ部屋入れてよ」
「入れるわけないじゃないですか…何で行けると思ったの…」
「いつまでそっち向いてんの?」
「レオナくん、下ろして」

レオナの反応がまるでない。
魔法で強行突破するわけにもいかず、力技なんて出来る訳もない。これでも体力は少しついたが、研究者で元は蝶よ花よと育てられてきたお嬢様なのだ。一歩間違えれば大変ふくよかになっていただろう。ナマエはこの事に関してはブラック家の血に大変感謝している。
足を軽く揺らすと上から腕で太ももを押さえつけられた。とんでもない力だ。

「コイツのところに何の用だ?」
「なぁんにも。強いて言うならグラミーせんせぇのお菓子。うまかったんだよね〜」
「はぁ?」

ブチッという音が聞こえた気がした。

「…お前は寮に帰りな」
「えっ、私このままですか!?」

バンッ

「…へ〜、入れる(、、、)んだぁ」

*


「で?俺には差し出さない癖にフロイドには渡すって?」
「やだなぁ、強奪っていうんですよあれは…まだ下ろしてくれないの?」

盛大にため息を吐きながら下ろしてもらえた。
彼の背が高いからか、顔が整っているからか、わからないけれど上から凄まれると大変恐ろしい。
いつもより大分眼光が鋭い気がする。

「レオナくんにもマフィン上げるので嫉妬しないで〜」
「…はぁ?」

あっ、やばいこれは本格的にキレて、

「俺がお前の彼氏様だってのはわかってるよな?」
「ウン…わかってる…」
「フロイドと同等ってのはおかしいよな?」
「おかしくはな、いてててておかしいですはい痛い!」

頬を抓られて少しだけ涙が出てくる。
それを見て半笑いのレオナ。
何もおかしくないしただただ痛い。こちらのことなど御構い無しだ。

「で?お前は俺に何をくれる?」
「ま、マフィンを…」
「マフィンと(、)何だ?」
「え、えっと…う…」

「言わないなら好きにしていいよな?」
「はい…はいっ!?え、待って、何して…!痛い痛い痛い!!」

じわじわと噛まれた首が痛む。口が離れて、やっと終わったと思えば違う箇所をひと舐めして、また噛まれた。首回り、腕に大量の歯型がついた。
つけた本人はニヤニヤ笑っているが、ナマエにとっては笑い事では無いのだ。

「いくら明日は休みだからってこれは無い!!見えるでしょうが!!」
「はぁ?見えるようにしてるんだよ。これで今日明日は出れねえな」
「出れないから!!困ってるんです!!」

獲物を狩るように、細められた目と口から覗く牙に心臓が跳ねた。




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ツユシグレ