夜のお茶会
「こんな時間に何をしているんだい?」
ここは深夜の食堂
普段なら誰もいないその場所で彼と私は出会った
「貴方こそ。普段ここを利用してないくせにこんな夜更けに何用ですか」
「今日は上手く寝付けなくてね、甘いものでもと思ったんだがミルクが無かったから貰いに来ただけさ」
大型の冷蔵庫からミルクを1つ拝借し部屋に戻ろうとしたジョゼフの後ろから声がした
「お菓子があるなら付き合ってあげますよ」
「……あるけど腹は満たされないと思うよ」
「ないよりマシです」
ジョゼフの返事を聞く前から彼は手に持っていた物を元の場所へ戻しこちらへ歩み寄る
「食いしん坊め」
「貴方のためですよ」
「心にも無いことを」
彼の部屋まで細い廊下をふたりで歩く
月明かりが道行くふたりの影を作った
ジョゼフの影に自分の影が埋まってしまいなんとなく悔しくなる
そんなことは知らないジョゼフはいつもの調子で話しかけてきてノートンもいつもの様に返事をした
そんな調子で歩いていればもう彼の部屋の前まで来ていた
どうぞ、と扉を開けて彼を通す
他人を迎える準備などして居ないジョゼフの部屋は夜のせいもあるのかヒヤリと冷たい空気だった
「適当に待っていなさい、用意してくるから」
「お言葉に甘えて」
真っ直ぐにベッドへ向かいボスン、とダイブする
ノートン曰く自室のベッドは固くて狭いらしい
だからこうして部屋を訪れる度にあれをやるものだから余程このベッドを気に入っているようだった
「そのまま寝るなよ」
「貴方が遅かったらわかりません」
「はいはい、すぐに準備しますとも」
どちらが部屋の主か分からないな、とボヤきながらジョゼフが備え付けのキッチンへ消えていく
それを見届けまたゴロリと寝転ぶ
寝るつもりは無いが吸い寄せられるように枕へ顔を埋めた
「……いい匂い」
少し遠くからする甘い匂いと一緒に彼の香りを吸い込む
目を閉じれば今にも寝てしまいそうだった
甘い香りが近くなる
あぁ、彼が戻ってきた
「寝るなと言っただろう」
「……寝てません」
「ふふ、じゃあこっちへおいで」
彼が用意したのはいつものお揃いのカップではなく少し縦長の取っ手が独特なデザインのものだった
それだけで中身が何なのかすぐわかる
立ち上がり席へ着く頃テーブルにはクッキーやスコーンと一緒にアイスクリームが乗ったプレートが用意されていた
「贅沢ですね」
「誰かさんが腹を空かせているようだからな」
はい、とデザートフォークが渡された
元々小さいそれは手の大きな彼が持つとより小さく見える
それがなんだかおかしくて
「とても小さなフォークを渡されたのかと思いました」
「そんな意地悪に見えるかい?」
「どうでしょう」
くすくすとノートンが笑う
そんな彼にひどいな、と言いつつもジョゼフも笑った
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