3/19
今日は3/19
探鉱者 ノートン・キャンベルの誕生日だ
仲間のみんなは口々におめでとう、と言いプレゼントだとラッピングされたものを渡した
それらを律儀にありがとう、と受け取るノートン
抱えきれないほどプレゼントを貰ってしまい1度部屋へ戻る
ベッドの脇にあるテーブルへ置き再び食堂へ行く
ノートンが食堂に着いた途端、アナウンスが流れた
次の試合情報です。各位内容の確認をして下さい
自分の名前が複数あるのを確認した彼は気持ちを切り替えるよう腰につけている磁石に手を伸ばす
誕生日くらいゆっくりさせてほしいものだ
「お、ノートンと一緒か!んじゃ安心だ!」
「どうかな」
話しかけてきたのはオフェンス、ウィリアム
彼とは最近チームになることが多く、話していく内に打ち解けていた
次の試合でもチームらしい
チーム構成はノートン、ウィリアム、エマ、ライリーの4人
この中でノートンの役割はハンターを引きつける事だろう
「勝てればいいけど……」
「大丈夫なの!」
「根拠は?」
「今日はキャンベルさんのお誕生日だから!なの!」
「誕生日と勝利はイコールではない気がするが……まぁ、がんばってハンターに追いかけられてくれ」
「げっ!このステージ苦手なんだよなぁ〜」
「がんばるなの!」
こんな賑やかな待ち時間は何時ぶりだろうか
その様子を眺めるノートン
ちらりと横目で提示されたステージを見る
場所は聖心病院
(あの人なら、いいな……)
ノートンは騒がしい3人の話題に入ることも無く頭に思い浮かべるは恋人の顔
ビーーーッ
お互いの準備が整ったことを知らせる音がした
それぞれ移動していき、試合が始まった
ハンターは誰か、まずは辺りを見回した
ノートンの探しているものはない
(違う、か……)
遠くで音がする
誰かがハンターと遭遇したようだ
「“ハンターは白黒無常。追われているのはウィリアムだ“」
「了解」
ハンターの近くにいたライリーから通信が来る
ウィリアムなら、とノートンは暗号機へ走る
解読を始めてすぐだった
ウィリアムの通信
「“おーい!今日は誰も殴らねぇってよ!“」
「“は?なぜ??“」
「“具合が悪いなの?“」
「“いんや、お誕生日様が居るからだと“」
「“!キャンベルさんのことなの!“」
「“こりゃいいときにチームになった“」
「ははっ……」
どうやらハンター達も彼の誕生日を祝いたいらしい
話に聞くと今日の試合、ノートンがいる場合は何もしないとハンター達で話があったそうだ
「喜んで、いいんだろうか……」
気持ちを切り替えてきたのにな、と嬉しいような、少し残念な気もするノートン
だがおかげで試合はサクサクと終わった
そんな調子で今日の試合は殆どが勝利だった
ノートンとしては怪我もなく有難いのだが本当に良いのだろうか、と不安になる
「次のハンターは誰だろう?」
「誰が来たってノートンが居るんだから同じだよ」
「なんか僕たちまで得しちゃったね」
みんなにはバレないようにため息をつく
善意しかない今日に少し居心地を悪く感じ始めていたノートン
それに……まだ彼に会えていない
今日の試合はこれが最後
この試合でも来なかったら、と考えていたら
「そう言えば、今日はまだジョゼフさんが来てないわ」
「確かに!」
「こういう日は張り切ってすぐ来るのにね」
「記念撮影だ〜ってさ!ね?ノートン」
彼の名前が上がり、ビクリと反応してしまった
「そ、そうだね」
「体調でも悪いのかしら?」
「あ!いつも最初だから今日は最後に来るとか?」
「そう、かもね……」
会いたいとは思う
しかし今日試合をしていないハンターはまだまだいる
今日は来ないのだろうと、ノートンは諦めていた
全ての試合が終わった
試合に出られなかったハンター達からはみんなから、と花束が届いていた
最後の試合は彼ではなかった
今は夕食でささやかなパーティをしてもらっている
主役だから、と色々もらいある程度腹も脹れた
「僕はもう部屋に戻るね」
「おいおい!主役がいなくなってどうすんだよ!」
「少し疲れたんだ、君たちはまだ楽しんでて」
「しょうがねぇな〜!あ、イライ!酒追加!!」
「はいはい」
楽しむみんなに見送られて食堂を出る
真っ直ぐ部屋に戻ろうと思ったノートンだが、なんとなく足が向いて中庭に来ていた
「たくさん、おめでとうって言われたな……子供の時以来だ」
「それはよかったね」
後ろから声がした
今日、ずっと聞きたかった声
「こんばんわ」
「ジョゼフ、さん……」
「隣、いいかな?」
「どうぞ」
会いに来てくれたのだろうか
ノートンは少し期待した
今日は会えないと思っていたから
「あの、今日は……」
「今日はお休みだよ」
「やっぱり……」
「寂しかった?」
「えぇ……いや、違、くない、けど……あの……っ!」
「ふふふ」
恥ずかしくて顔を伏せる
頬が熱くまだ冷たい風が気持ちいい
「言ってほしいかい?」
「へ……?」
「誕生日、なんだろう?」
「えぇ、まぁ……そりゃ……」
誰よりも、祝って欲しいと思った相手だ
ほしいに決まってる
「よし、じゃあ私の部屋に行こう」
「わかりました」
ジョゼフがそう言うなら、と2人で部屋に向かう
ハンターの館は宴会をしているサバイバーの館とは違ってとても静かだった
「どうぞ」
「お邪魔します」
扉が開かれ中に入るように促される
言う通りに入れば部屋の真ん中に彼の大事な撮影機があった
ジョゼフが大事なものを仕舞い忘れることなんてことは無い
つまりこれは今から使うのだろう
「これ……」
「あぁ、今日はこれの手入れをしていたんだ」
「だから休みに……」
「今日は大切な写真を撮るからね」
そう言ってノートンの肩に手を置くジョゼフ
「ここに座って」
「はい」
用意されていた椅子に座る
正面の撮影機にはジョゼフが居る
大切な写真、という言葉に自然と口角が上がってしまう
「ふふふ、いい笑顔だね」
「……あまり見ないで」
「やーだよ。……撮るから動かないで」
いたずらな笑みを浮かべていた顔が撮るとなると真剣になる
その瞬間がノートンは好きだった
そしていつもの様に撮ると思いこちらも動かないよう身構える
しかし今回は違った
ジョゼフが撮影機から離れてこちらに来たのだ
「……?撮るんじゃ……?」
「動かないで」
「は、はい」
遅れてパシャリ、と音がした
「うまく撮れたかな」
どういうことだろうか
撮影する時は動けないはず
ひとり状況がわからず戸惑うノートン
「……うん、いい感じだ。はい、ノートン」
撮ったらしい写真をもらいそれを見て目を見開く
そこには自分と、彼が写っていた
いつも撮ってくれる彼
撮影者は写れないと彼もよく言う
そんな彼と並んだ写真がもらえると誰が想像できただろうか
しかも彼に撮ってもらって、だ
「これ……」
「撮る時に少し遅らせることが出来るようにしたんだ」
「こんな、うそ……」
「気に入ってくれたかい?」
言葉にならずコクコクと頷く
ポロポロとこぼれる雫をジョゼフの綺麗な指が掬う
「そんなに喜んでもらえるなんてね、こちらとしても嬉しいよ」
よしよし、と背中を優しく撫でるジョゼフ
そのままノートンを抱き上げベッドへ降ろす
「貸して、このままじゃ折れてしまうよ」
この写真だけは大切にしたい
大人しく彼の言う通りに写真を渡すと棚の中へ仕舞われた
「誕生日おめでとう、ノートン」
髪に、額に、頬に、キスの雨が降る
どれもくすぐったい
「ありがとう、ジョゼフ」
「あと僅かだけど、いっぱい祝福してあげよう」
「嬉しい」
自然と重なる唇
彼に縋るように抱きつく
僕は今、世界一幸せな時間を過ごしている
この時間がずっと続けばいいと祈る
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