そろそろ彼が来る時間だ
ノートンは立ち上がり窓を開ける
彼と出会った季節は半周し今は夏
昼に暑かった風も夜は涼しくなる
夜風に当たっているとこちらに向かって飛んでくる1羽のコウモリが見えた
おいで、と手を広げ迎え入れる
するとコウモリはふわりと飛び部屋に入ってきた

「こんばんわ」
「開けっ放しにしていたら暑いだろうに」
「いいえ、今日は風が気持ちがいいです」
「そう?」

私は暑いよ、と手でパタパタと扇ぐ

「コートを脱げばいいのに」
「そうさせてもらおう」

赤いコートを受け取り、彼のために購入したコートハンガーへ掛ける
ここにコートがあると彼が居るのだと実感出来て嬉しい
いつの間にか後ろに来ていた血影がノートンを抱きしめる

「どうしたんだい?ニコニコして」
「ぇ……、あ、いや……」
「私と会えてそんなに嬉しい?」
「そ、そりゃ……そうですよ……」
「ふふ、可愛いね」

スリッと頬擦りをされ髪が首筋に当たって少し擽ったい
あぁ、幸せだ

「そうだ、あのねノートン」
「なんですか?」
「そろそろ君を紹介したいんだ」

いいかい?と首を傾げる仕草が可愛らしい

「別に構わないけど……」
「……もれなく血族なんだけど」

本当な大丈夫?と尋ねる血影
確かに吸血鬼は苦手だが彼の身内ならばきっと

「大丈夫だと思います」
「言い出したのは私だけど、無理しなくてもいいよ?」
「いいえ……僕も貴方の家族と会いたい」
「そう……じゃあさっそく君の呼び名を決めないと」

そういえば血族には本名を明かしてはいけない決まりがあったんだったな、と思い出す
最近彼と会うときは自分の部屋でお互いの名を呼びあっていから忘れかけていた

「どんなのがいいかなぁ……」
「別になんでもいいですよ」
「どうせなら君らしい呼び名がいいじゃないか」

呼び名ひとつでも真剣になってくれる血影に嬉しくなってしまう
彼がウンウンと悩んでいる間にノートンはお茶を入れようと湯を沸かし始めた

「ん〜……ねぇ、君は普段何をしているの?」
「仕事ですね。すぐそこの鉱山で探鉱をしています」
「ふむふむ……じゃあ君は“探鉱者“と名乗るといい」

名前にかすりもせず特定されにくくていい、と彼は言った

「これから私と外にいる間、君の名は探鉱者だよ」
「探鉱者……」
「間違っても自分の名前を言わないようにね?」
「……善処します」
「いい子だ」

いつの間にか準備しようとしていたティーポットやカップを血影が持ってきていた
はい、と茶葉も渡される
今日はこれがいいのだろう
彼が置いていった茶葉の中で最も香りが高いものだ

「いつにしようかな」
「夜ならいつでも」
「じゃあ明日!」
「ふふ、気が早いですね」
「早く自慢したいのさ」

自分なんか自慢になるようなものは無いのに
でも彼が楽しそうだから良しとした

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