夢のまた夢
夢を見る
様々な人間と鬼ごっこと称したゲームをする夢だ
みな顔には影が落ち口元だけが見える
なにか言っているように口が動くが声は聞こえなかった
「またあの夢……」
別段悪夢だとは思わない
昔からたまに見ていた夢
しかし最近は頻繁に見るようになっていた
その中に見覚えのある人物がいる
恋人であるノートン・キャンベルだ
ジョゼフは彼を追いかけ手に持っているサーベルで切り刻む
夢の自分は苦しむ彼を見て笑っていたがそんな趣味はない
もしかしたら私や彼ではなく別人ではないか、と考えたがそう思うには彼らは自分達に似すぎている
「こんなにも、大切にしたいと思っているのに」
隣で寝息を立てる恋人の髪に指を絡める
小さな声が聞こえ布団に埋もれた顔が少し出てきた
起こしてしまっただろうかと顔を覗くが彼の目は閉じられたまま
「少し調べてみるか」
複雑な気持ちのままでいたくなかった
ノートンはジョゼフの感情に敏感で隠していてもすぐにバレてしまう
不安にさせたくない
ジョゼフは仕事の帰りに知人を訪ねることにした
「それで私の元へ来たというわけですね」
「この夢にはお前らしき人物もいてね、心当たりはないかと」
「はぁ……私を夢に見るほど好きだったとは意外です」
「角でいいな」
「冗談ですからその手に持った厚さ5cmの本を置いてください」
ジョゼフを揶揄うのは仕事でたまに一緒になるジャックという男
彼はとあるブランドのデザイナーをしている
「心当たりと言われましても貴方の夢のことなんて私がわかるわけないでしょう?」
「お前は私の話をただの夢だと思うか?」
「何度も見ていると言うのは気掛かりですが私はその夢になにか感じるものはありません」
「……そうか、わかった。ありがとう」
帰ろうと席を立つジョゼフにジャックが言う
「こういう話は私よりも"彼女"が向いているんじゃないです?」
「……"あれ"の世話になりたくはない」
「そうは言っても最終的には世話になるんですから」
「嫌な話だ」
「連絡しておきますからその足でお行きなさい」
「どうも」
その場所はここからさほど遠くはない
しかし行きたくないと思う気持ちから足取りは重く少しの距離でも時間がかかってしまった
扉の前で何分か過ごし覚悟を決めノックする
「こんばんは、お邪魔するよ」
「お早いご到着ですね、ジョゼフ様」
「相も変わらず嫌味な奴だ」
「ちょっとした冗談です。ご要件はジャック様より伺っております」
「なら話は早い」
彼に話したことを同じように伝える
なるほど、と言って彼女は奥の部屋へ行き1冊の本を持ってきた
「これは?」
「とある方の日記です。どうぞご覧になってください」
「人様の日記を読む趣味はないんだけど……」
彼女がやれと言うことに無意味なことは無いと分かっているが誰かの日記だと言われたら気が進まない
そう伝えても彼女は曲げずどうぞとしか言わなかった
仕方なく本を開きパラパラと捲る
そこには自分が見た夢と同じような出来事があったと書いてある
どういうことだ、と彼女を問い詰めるとここを見ろと指示された
そこには日記の主の名が、自分とよく似た字で"Joseph"と書いてある
「エウリュディケ荘園での出来事を思い出した者に渡すように言われております」
「思い出した?」
「所謂前世の記憶というものです」
「じゃああの夢は私の前世だと言うのか?」
「私はそう考えます」
「……なんてことだ」
信じ難い
しかし偶然にしては出来すぎている
名前も、職業も、恋人とよく似た彼とのことも
最初は混乱していたが段々と馴染むように頭の中はスッキリとしていった
「この日記はそこにいた全員のものがあるのか」
「ございます」
「私の他に、誰か来た者はいるか」
「数名」
「あの子は……いや、なんでもない」
日記は彼女へ返した
持っていても良いと言われたが今の私には関係のないことだ、あんなものを持っていても仕方がないと突き返した
帰り道、頭を巡るのは恋人であるノートンのこと
一気に流れ込んでくる前世の記憶とやらにクラクラする
「私は……私はあの子が彼だから、だから選んだのだろうか……」
そんなことは無いはずだと言い聞かせるが不安が募る
ノートンの顔を見るのが怖い
きっと上手く笑えない、早く家に帰ってあの子に触れたいのに少しだけ帰りたくないと思ってしまう
こんな事ならただの夢で片付けておけばよかった
朝の自分を呪いながら足はしっかり家へ向かって歩いている
はぁ、と何度目かも分からないため息をつき顔を上げると見慣れた我が家が見えた
ドアの前に人影がありあの子がいるとわかると嬉しくて足が軽くなる
「おかえりなさい」
「ただいま、遅くなってしまってごめんね」
「いいえ、お疲れ様です」
ノートンは扉を開けジョゼフに中へ入るように促す
カバンと上着を受け取り部屋に置いてくると言って先に行ってしまった
後ろ姿を見ていると夢の彼が重なる
あの背中をいつも追いかけていたなぁ、と懐かしく感じてしまい複雑な気持ちだ
しっかりと目を開いて彼の背中を見る
ちゃんと私の愛しいノートンだ
「?背中になにか……?」
「あ、あぁ、いや……なんでもないよ」
「変なジョゼフさん」
クスクスと笑うノートン
あぁ愛おしい
「……ねぇノートン」
「なんですか?」
「どうして私を選んでくれたんだい?」
「は……?」
突然の問いかけに目を丸くする
また何かの遊びかと思ったノートンだがジョゼフが真剣だと目を見てすぐに理解しちゃんと彼の目を見てこう答えた
「あの手この手で僕を捕まえようとする貴方を僕のものにしてやろうと思ったからです」
「君らしいな」
「好きでしょう?」
「あぁ」
最高だね、と呟き彼の居る所まで歩き出す
きっと彼なら何度でも私を選んでくれるのだろう、そう期待をして悩みは捨てることにした
「サバイバー、ハンター共に夢を見る方が増えてまいりました」
「ーーーーー」
「わかりません」
「ーーー、ーーーーーー」
「はい、畏まりました。×××様」
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