「ねぇ、何してるの?」

月明かりが照らす部屋
仕事していた彼に話しかけてきたのは姿の見えない影
また変な者が入り込んだか、と彼はため息をつく

「ねぇってば」
「何って……仕事ですよ」
「仕事?どんな?」
「……物や生き物を管理して記録する仕事です」
「それって楽しい?」
「僕は楽しいですよ」

誰と話しているのかなんてわからない
影は動かない

「色々と知る事が出来るのはいい事です」
「ふーん……」

何も見えないのに声の主は目の前にいる、そんな気がした
適当に相手をすればそのうち飽きてすぐどこかへ行くだろうと思ったのだがどうやら思ったよりも興味を持ってしまったようだ

「決めた。私も君のことを記録してみよう」

名案だ、と言うようにご機嫌な声だった
影の言っていることがよくわからない
これは会話になっているのだろうか

「あぁ!でも私が一方的に記録するのも何か悪いなぁ……」
「いや、別にいいんですけど……」
「そうだ、君は私を観察して記録をしていいよ」

ね?と言うが彼は今自分が見えていないことに気付いていないのだろうか

「はぁ……姿が見えない相手をどうやって見ろと言うんですか」
「あぁ、いけない。忘れていた」

ゆらりと影が動く
窓から差し込む月明かりの下へ出れば彼の姿が現れた

「私はアズラーイール。君は?」
「僕には名はありません」
「それじゃ困るなぁ……」
「魔物管理者、と言う俗称はありますよ」
「じゃあ管理者くんだ」

自分勝手でこちらの事などお構い無しの彼
そんな彼との不思議な日々が始まった

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