はじめまして
暗く埃っぽい店内
母と訪れた店は古くからある老舗の骨董品店
こんなもののどこがいいんだろうか、と埃を被った壺を撫でる
「気に入ったものがあれば買ってあげる、と言われても……」
母はここに買い物をしに来た訳では無い
仕事の手伝いをするために一緒に来たのにお前は店を見ておいで、と厄介払いされてしまった
確かにノートンはまだ幼い
周りからは「雀」と呼ばれている
雀のように小さくて飛び回るから、らしい
可愛がって貰えるのは嬉しい
しかしそれだけでは足りない
「ぼくは妈妈の役に立ちたいのに……」
骨董品になど用はない
しかし母を待つ時間、暇でしかないのだ
嫌でもそれらを見て回るしか無かった
そろそろ話も終わる頃だろうと母の元へ戻ろうと踵を返す
ふと振り返った先にキラリと光るものを見つけた
どれもこれも埃をかぶっている中でそんなものあっただろうか
光に近づいてみる
「なんだ、これ……」
光の正体は透明な箱に収められた西洋人形だった
「ガラスが反射したのかな……でもここに光なんて入らないけど……」
マジマジと観察していく
青い服に金色の刺繍
丁寧に作られているようだが所々は雑でワタが出ていたりテープで止めてあるだけの部分もある
「どうしてこれだけこんなに綺麗なんだろう」
この人形の周りだけ埃がなかった
仕入れて間もないのだろうか
でもそれなら店頭に置くはずだ
「顔も綺麗だね」
「merci」
「??」
声が聞こえた気がする
キョロキョロ見回すがここには自分だけだ
「……?あれ、目が……」
少し目を離した好きに人形の目が開いていた
いや、最初から開いていたのかもしれない
よく覚えていない
「そっか、さっきの光は君の目だったんだね」
透き通るような青だった
ここは暗いから少し暗い色に見えるが明るい場所で見たらもっと綺麗なのだろうとノートンは目を輝かせた
「この子、気に入ったん?」
「ぁ……妈妈……うん、この子すごく綺麗で」
「本当、綺麗な目しはるなぁ……店主、この子なんぼ?」
「いやいや!美智子様からお金を取れませんよ。お譲りします」
「こない立派なもんタダなんて……」
「いいんですよ!むしろ、申し訳ないと言うか……」
「どういうこと?」
店主が言うには、この人形は呪われているらしい
気に入らない人間に買われると勝手に店に帰ってくるというのだ
買い手に聞くとひとりでに歩いて言葉も話したと言う
それで行くあてがなくなり今もここに居るのだと
「だから私も手を焼いていましてね……良ければ引き取って貰えたら、と思うんですよ」
「雀、どないする?」
「…………怒ってる」
「え?」
突然ノートンが言い出す
「この子、怒ってるよ」
「な、なんでそんなことが……」
「おじさんこの子の目をちゃんと見たことないの?」
「目……?」
先程までの青とは違い人形の目は怒気を孕んだ赤色になっていた
「きっと呪われているなんて言うから怒ったんだ」
「し、しかし!実際にこの人形はいつもこの店に帰って……!」
「お前が買い手の家から盗んでくるんだろう」
また声がした
さっきと同じ声
「……だ、誰が……っ?!」
「この子だよ」
「はぁ?!」
「雀?」
ノートンは人形に歩み寄る
そして彼に向かってこう言った
「ね、君だよね?さっきのも」
「ご名答」
パカッと蓋を開けて中の人形が出てくる
店主はひぃ、と悲鳴をあげその場に尻もちを着いた
「確かに私は自分の意思で動ける。しかしお前が盗んでまた売って、と繰り返しているだけで私が呪いの人形だのなんだの言われるのは気に入らないな」
「な、しゃべ……っ!!」
「いい小遣い稼ぎが出来て良かったな」
彼の話によると店主はなかなか悪どい行為を行っていたようだ
それを聞いた母の顔は仕事の時の顔をしていた
「なるほどなぁ……よぉわかりましたわ」
「み、美智子様!これはちが……っ!」
「そない悪どい商売しはるとは……先の話は無かったことにさせていただきやしょう」
「そんなぁ!!」
悪事がバレてしまい母との話は無くなったようだ
その場に崩れ落ちる店主
もう関係ない、と母は容赦やなく切り捨てノートンの腕を掴む
「帰んで雀」
「妈妈……あの子は……」
「心配せずともちゃんとついて行くよ」
「ウチの許可なく家には入れんよ」
「今回の件で手を打っては頂けないだろうか、Lady」
確かに彼のおかげで危ない橋を渡らずに済んだ
ノートンも彼のことは気に入っている
「妈妈……」
「……ええよ」
「やった!妈妈大好き!」
「雀には敵わへんなぁ」
今日の仕事は終わり
新しい家族と家へ帰ろう
back
top